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はじまり68
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~真実~
「一体、あの三人は何をやっているんですか」
呆れ返るようなヨウメイの言葉に、隣ではキールが声を
押し殺して笑います。
少年のルーンは、お返事があればお願いしますと
伝令役を楽しんでいるようでした。
「しかも、この手紙の内容を信じろと?」
片眉をあげてルーンに凄んでみせると、すまして答えます。
「それがお返事なら仕方がない、と伺っています。」
たまらずに噴出したキール王子の隣で、同じようにヨウメイも
苦笑をもらします。
シキ、クローディア、ソウの三人は、嵐のどさくさにまぎれて、
表向きには大事故にあったのだと記されています。
そして、クローディアは出産して双子を産んだものの、
体調が回復せずにそのまま命を落としました。
残されたクローディアの相手は、一人取り残されたものの、
お金もなければ家もないという有様です。
双子を一人で育てあげるわけにもいかず、それぞれ、
子供を欲しがる若い夫婦に託しました。
女の子は、ある資産家の子のない夫婦に、
男の子は、にぎやかで人のいい、小さな商家の三人家族に
頼みました。
父親はそのまま街に残り、復興の手伝いに励みます。
そして、いつか親子の名乗りをあげることを夢見て、
妻の菩提を弔いながら、静かに生きているのだと書いてありました。
若い医師として連れ添った青年も、町で重軽傷の手当てに励みましたが、
途中で病にかかり、なんとかしてこの手紙を書き残したのでした。
「ずいぶんと美談になっていますね。」
虚実取り混ぜた手紙の内容とはもうひとつ、別の内容が
書かれた文章がありました。
反転文字といい、はるか昔によく密書などで使われた手です。
あぶり出しとも言いました。
「火や水がよく使われていましたが…」
「うん、これは特殊なインクのようなものだね」
キールとヨウメイが最初の文書を読み終わった後に、
ぽっかりと浮き上がってきたのです。
そこには、三人に起こった本当のことが、全て記されていました。
どういう仕組みになっているのか、二人には検討もつきません。
「これが、不思議な人から教えてもらった技術なのかい?」
黒髪の少年に聞けば、こっくりとうなづきます。
しかし、ルーンもあまり詳しく教えてもらっているわけでは
なかったので詳細を語ることはできませんでした。
『自分の想像を超える事柄に出会わなければ、王子は、納得しないでしょう』
これが、ソウ王子の言葉でした。
そして、二人が読み終わった後に、文字は消えてただの訃報に
戻ってしまったのです。
「つまり、三人は生きていると」
晴れやかに笑って、ルーンがうなづきました。
「キール王子の戴冠式と、結婚式には出席なさるそうですよ」
キール王子とヨウメイは顔を見合わせて、また噴出しました。
何はともあれ、すぐにでも王と王妃にこの訃報を知らせなければ
なりません。
「元婚約者であり、仲の良かった妹のような姫君を亡くした
男性らしく振舞ってくださいね」
ヨウメイの言葉に苦笑いを浮かべて、そのまま自室をでていきます。
ルーンは慌てて王子の後を追いかけました。
「返事をください、キール王子!」
つづく
「一体、あの三人は何をやっているんですか」
呆れ返るようなヨウメイの言葉に、隣ではキールが声を
押し殺して笑います。
少年のルーンは、お返事があればお願いしますと
伝令役を楽しんでいるようでした。
「しかも、この手紙の内容を信じろと?」
片眉をあげてルーンに凄んでみせると、すまして答えます。
「それがお返事なら仕方がない、と伺っています。」
たまらずに噴出したキール王子の隣で、同じようにヨウメイも
苦笑をもらします。
シキ、クローディア、ソウの三人は、嵐のどさくさにまぎれて、
表向きには大事故にあったのだと記されています。
そして、クローディアは出産して双子を産んだものの、
体調が回復せずにそのまま命を落としました。
残されたクローディアの相手は、一人取り残されたものの、
お金もなければ家もないという有様です。
双子を一人で育てあげるわけにもいかず、それぞれ、
子供を欲しがる若い夫婦に託しました。
女の子は、ある資産家の子のない夫婦に、
男の子は、にぎやかで人のいい、小さな商家の三人家族に
頼みました。
父親はそのまま街に残り、復興の手伝いに励みます。
そして、いつか親子の名乗りをあげることを夢見て、
妻の菩提を弔いながら、静かに生きているのだと書いてありました。
若い医師として連れ添った青年も、町で重軽傷の手当てに励みましたが、
途中で病にかかり、なんとかしてこの手紙を書き残したのでした。
「ずいぶんと美談になっていますね。」
虚実取り混ぜた手紙の内容とはもうひとつ、別の内容が
書かれた文章がありました。
反転文字といい、はるか昔によく密書などで使われた手です。
あぶり出しとも言いました。
「火や水がよく使われていましたが…」
「うん、これは特殊なインクのようなものだね」
キールとヨウメイが最初の文書を読み終わった後に、
ぽっかりと浮き上がってきたのです。
そこには、三人に起こった本当のことが、全て記されていました。
どういう仕組みになっているのか、二人には検討もつきません。
「これが、不思議な人から教えてもらった技術なのかい?」
黒髪の少年に聞けば、こっくりとうなづきます。
しかし、ルーンもあまり詳しく教えてもらっているわけでは
なかったので詳細を語ることはできませんでした。
『自分の想像を超える事柄に出会わなければ、王子は、納得しないでしょう』
これが、ソウ王子の言葉でした。
そして、二人が読み終わった後に、文字は消えてただの訃報に
戻ってしまったのです。
「つまり、三人は生きていると」
晴れやかに笑って、ルーンがうなづきました。
「キール王子の戴冠式と、結婚式には出席なさるそうですよ」
キール王子とヨウメイは顔を見合わせて、また噴出しました。
何はともあれ、すぐにでも王と王妃にこの訃報を知らせなければ
なりません。
「元婚約者であり、仲の良かった妹のような姫君を亡くした
男性らしく振舞ってくださいね」
ヨウメイの言葉に苦笑いを浮かべて、そのまま自室をでていきます。
ルーンは慌てて王子の後を追いかけました。
「返事をください、キール王子!」
つづく
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