はじまり

はじまり５９

～客人～


ルーンと一緒に赤子をあやしていると、表が騒がしくなりました。 
帰ってきたのだと、ほっと胸をなでおろしましたが、どうやら様子が変です。 
早く部屋にベッドの用意を、など口々に叫びながらたくさんの人が流れこんできます。 

「ちょっと見てくる」 

ルーンは、とたとたと走って、扉の外へと様子をうかがいに行きます。 
もしかしたら、誰か怪我でもしたのだろうかと顔を歪めたとき、
ルーンが顔を輝かせて飛び込んできました。 

「クローディア、赤ちゃんが産まれそうなんだって！」 

ルーンが叫んだ途端、おぎゃあと元気な赤ん坊の泣き声が部屋の奥から響いてきました。 

しばらくして、シキがクローディアのそばにやってきました。
様子を見にこられなかったことを詫びて、クローディアの額にキスをします。 
嵐に遭った船に、若い妊婦が乗っていました。
産み月が近く、この島で滞在する予定でした。 

ひどい嵐に産気づき、船から助けだされましたが、
港付近の病院は怪我の重症な者ばかりでした。 

彼女の様子に気づいたソウとシキが、この家に運びこむことを提案し、
先ほどなんとか辿り着いたのでした。 

「無事に生まれたよ」 

わがことのように、晴々と笑います。クローディアは口をとがらせます。
どうものけ者にされたようで、気に入りません。 

「で？どっちなの？」 

横目でにらむクローディアに笑います。 

「男の子だよ」 

「そう、良かったわ」 

クローディアは、目元を和ませました。 


つづく