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ミコナ

そういうことやと思といたら

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そうです。ティーさんが目指しているのは、家に帰ってこない父親はもう脇に置いて、サンギータと彼女の母親との関係が、今よりちょっとだけ改善すれば万々歳というものでした。サンギータの抱えるすべての問題を解決できるだけの力を持ってるなんて思い上がっていません。

『お母さんとこうやって一緒に食事ができるようになれば十分でっしゃろ。サンギータはんは自分より弱い相手をイジメるようなお人やあらしまへん。なんか嫌なことがあったらワイに愚痴ってもらえばええ。お母さんに当たる必要はおまへんのや』

そう考えているだけなんです。そしてそれだけでも、この娘と母親の問題の大半は片付くでしょうね。

だってヴァドヤも誰かに対して攻撃的になるタイプじゃありませんから。ただただすっごく怖い感じに育ってしまった自分の娘に怯えていただけなんです。家のことが十分できなくたってハウスキーパーが週に一回、メンテナンスに来てくれます。それで家のことは何とかなる。

娘に怯える必要がなくなれば、ヴァドヤにとってこの家はちょうどいいシェルターですし。

ちなみに、学校の個人懇談とかをどうしていたかと言うと、それも、実は専門の代行サービスを行っている企業があって、そこに頼んで人を派遣してもらっていたんです。もっとも、サンギータにとってはそれも憤りの原因の一つでしたが、

『親のクセに親としての仕事もしないのかよ!!』

という形で。でもそれについても、

「まあまあ、世の中には先生とかと面と向かって顔を合わせるのが怖いってお人もいるんやし、そういうことやと思といたらええですやん」

となだめてくれていたのでした。

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