450 / 837
ミコナ
ここ数年ほとんど口にしたことのない
しおりを挟む
「……ごちそうさま……」
ヴァドヤの手作りハンバーグを綺麗に平らげて、サンギータはそう口にしました。ここ数年ほとんど口にしたことのない、少なくとも彼女自身が記憶にある限りでは口にした覚えのない言葉でした。
幼い頃にはそれなりに言っていた覚えもあるけれど。
「……」
そんなサンギータの言葉に、ヴァドヤは喜ぶというよりは唖然としていました。まさかの言葉だったからそれが頭に入ってこなかったんです。
そしてサンギータは、呆然とする母親をそのままにして、自分の部屋に戻っていきました。ティーさんがそれに続きます。
「よかったね……食べてくれたね……」
「……」
ガーが言うと、ようやくヴァドヤも頷きました。
実感が湧いてきたんでしょう。本当によかったです。
ただ、それですぐ、サンギータとヴァドヤの関係が良くなるというわけでもありません。そんな簡単な問題じゃありません。サンギータの両親に対する不信感は、その程度で解消されるような生易しいものじゃなかったんです。
でも、間違いなくいいきっかけにはなったんじゃないでしょうか。
実際、その日を境に、サンギータは、ヴァドヤの作った食事を食べるようになったんですから。
食べる前には、
「……いただきます……」
食べ終わったら、
「……ごちそうさまでした……」
と口にします。それを聞くと、サンギータも料理してよかったと思えました。だからガーに教わって、少なくとも一週間、ローテーションでメニューを決められる程度には作れるようになっていったんです。
月曜日はオムライス。
火曜日はハンバーグ。
水曜日は焼き魚。
木曜日はカルボナーラ。
金曜日はシチュー。
土曜日はピラフ。
日曜日はカレー。
という風に。
ヴァドヤの手作りハンバーグを綺麗に平らげて、サンギータはそう口にしました。ここ数年ほとんど口にしたことのない、少なくとも彼女自身が記憶にある限りでは口にした覚えのない言葉でした。
幼い頃にはそれなりに言っていた覚えもあるけれど。
「……」
そんなサンギータの言葉に、ヴァドヤは喜ぶというよりは唖然としていました。まさかの言葉だったからそれが頭に入ってこなかったんです。
そしてサンギータは、呆然とする母親をそのままにして、自分の部屋に戻っていきました。ティーさんがそれに続きます。
「よかったね……食べてくれたね……」
「……」
ガーが言うと、ようやくヴァドヤも頷きました。
実感が湧いてきたんでしょう。本当によかったです。
ただ、それですぐ、サンギータとヴァドヤの関係が良くなるというわけでもありません。そんな簡単な問題じゃありません。サンギータの両親に対する不信感は、その程度で解消されるような生易しいものじゃなかったんです。
でも、間違いなくいいきっかけにはなったんじゃないでしょうか。
実際、その日を境に、サンギータは、ヴァドヤの作った食事を食べるようになったんですから。
食べる前には、
「……いただきます……」
食べ終わったら、
「……ごちそうさまでした……」
と口にします。それを聞くと、サンギータも料理してよかったと思えました。だからガーに教わって、少なくとも一週間、ローテーションでメニューを決められる程度には作れるようになっていったんです。
月曜日はオムライス。
火曜日はハンバーグ。
水曜日は焼き魚。
木曜日はカルボナーラ。
金曜日はシチュー。
土曜日はピラフ。
日曜日はカレー。
という風に。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
まもののおいしゃさん
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
まもののおいしゃさん〜役立たずと追い出されたオッサン冒険者、豊富な魔物の知識を活かし世界で唯一の魔物専門医として娘とのんびりスローライフを楽しんでいるのでもう放っておいてくれませんか〜
長年Sランクパーティー獣の檻に所属していたテイマーのアスガルドは、より深いダンジョンに潜るのに、足手まといと切り捨てられる。
失意の中故郷に戻ると、娘と村の人たちが優しく出迎えてくれたが、村は魔物の被害に苦しんでいた。
貧乏な村には、ギルドに魔物討伐を依頼する金もない。
──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
魔物と人の共存方法の提案、6次産業の商品を次々と開発し、貧乏だった村は潤っていく。
噂を聞きつけた他の地域からも、どんどん声がかかり、民衆は「魔物を守れ!討伐よりも共存を!」と言い出した。
魔物を狩れなくなった冒険者たちは次々と廃業を余儀なくされ、ついには王宮から声がかかる。
いやいや、娘とのんびり暮らせれば充分なんで、もう放っておいてくれませんか?
※魔物は有名なものより、オリジナルなことが多いです。
一切バトルしませんが、そういうのが
お好きな方に読んでいただけると
嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる