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ミコナ

人は同じではありません

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ティーさんは言います。

『いくらサンギータはんでも、ガーの気持ちを変えることはできんのや。サンギータはんとガーは、別の存在やからな』

と。その通りです。人は同じではありません。それぞれ別の存在です。ガーは<かぷせるあにまる>ですけど、そこに宿っているのはルリアの魂の一部。サンギータとルリアは別人なんです。

しかも、人の心はいくつもの矛盾を含んでいる。だから、オウとガーのように極端な部分も存在する。ガーの基になった部分はもうルリア自身普段は意識していなくても、無意識としては残り続ける。それが、かぷせるあにまるとして五つに分かれたことで表面化した。

これは、ティーさんでさえガーの考えを変えることはできないということでもあります。人は、自分の心さえ完全には制御できませんから。

だから言うんです。

「サンギータはん。お母さんのことが許せへんサンギータはんの気持ちも、ワイらがどうにかできるもんやないのは分かっとる。せやから、お母さんのことを許せとは言わん。でも、これは、ガーとお母さんの問題や。ガーがお母さんをよう責めんと言うんやったら、ワイももう責められん。このことは、分かってほしいんや」

けれど、そんなティーさんの言葉にも、

「分からない! 分かりたくないよそんなこと!! 悪い奴は罰するのが法律じゃないのかよ!! 法律が役に立たないなら、なんでそんなもんがあるんだよ!  ふざけんな!!」

サンギータは吠えます。吠えずにはいられないのです。理不尽なこの世界が、サンギータには許せない。でも、だからこそ、ティーさんがサンギータを認めます。

「そうやな。サンギータはんが正しい……」

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