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ミコナ

別に大人になるための試験が

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サンギータは続けます。

「あの女はね。いつだって自分が非力で可哀想な被害者だってことにしたいんだ。弱い自分は守ってもらえるべきだって思ってるんだよ。そうやって自分にとって都合のいい相手をいつだって探してるんだ。

自分にばっかり都合のいいのを探してるって意味じゃあの男と同類だよな。まったく、似た者同士だぜ。だけどよ、世の中ってのはそんなに都合よくはいかないよな。でもあいつらは、自分にとって都合よくいくのが正しい事だと思ってやがるんだ。

そんな親どうやって尊敬したらいいってんだよ。小学生以下じゃん」

そこまで一気にまくし立てたサンギータの話を遮ることなく耳を傾けていたティーさんも、彼女が言葉を途切らせたところで口を開きます。

「そうやな。大人なんてもんは、元々そんなに立派なものやおまへん。別に大人になるための試験があるわけやないし、歳をとったらそれだけで大人って言われるようになりまんねや。ワイも正直、ホンマにそれでええんやろかと思う時がおます。せやから、サンギータはんには自分がアカンと思うような大人にならんように頑張ってほしいんや。そうなるためには何が必要なんか、ワイも一緒に考えさせてもらいまっせ。

嘆いたり文句言うてるだけやったら、ダメな大人と変わらしまへん。そういう大人を見返すためには、自分がそうやないようにならなあかんのや」

そう語るティーさんの言葉に、サンギータも耳を傾けます。自分の両親がしないことできないことを、彼女はできるようになってきているんです。今はまだティーさんをはじめとした限られた相手だけですけど。

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