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ミコナ

人の心というものは難しいよ

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ミコナと一緒に、折り畳みのテーブルとジュースとコップを届けた後、ウルは改めて語ります。

「あの、サンギータという子は、あくまでティーさんに気を許しただけで、まだミコナに対してはそういうのじゃないと思う。ましてやガーのことは、今日、初めて会ったんだ。だったら遠慮してしまっても当然じゃないかな。

遠慮していては、話したいことも話せなくなってしまうと思うんだ。しかも、うちにはハカセもいる。大人がいる前じゃ話しにくいこともあるはずだからね」

「そっか……難しいね……」

「ああ、人の心というものは難しいよ。僕達だって、ルリアという一人の人間の魂が分割したものでありながらこんなにもそれぞれ性格が違うだろう? これがまさに人間という生き物の複雑さを難しさを表していると僕も思うんだ」

「なるほどぉ……」

ミコナはウルの話に聞き入って、感心します。こういう話が、タムテルやサンギータにはできない。自分の親と。両親の方が聞く耳を持ってくれないからです。

聞く耳を持たない両親であると、両親自身が態度で示してしまっているから。

態度で『聞く耳持たない』と示しているのに、それを改めもせずに口だけで、

『言いたいことがあるなら聞く』

的なことを言われても、信用できないですよね。それだけの話なんでしょう。

だから今は、ティーさんとたくさん話をするんです。両親には聞いてもらえなかった話をたくさん。

もちろん、話を聞いたからって何もかもその通りになんてできません。サンギータにとって都合のいい結末を用意することはできないでしょう。

でも、それでいいんです。聞いてもらうことそのものが目的なんですから。

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