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ミコナ

両親の方から成長してもらわないと

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ティーさんがサンギータの素直な気持ちを引き出せるようになったのは、結局、ティーさんにそれだけの信頼感があったから。きちんと彼女の気持ちに向き合う姿勢を見せていたから。

もし、彼女の父親や母親がティーさんと同じことをしようとしても、まず彼女からの信頼を勝ち得ないと話にならなかったでしょう。そして両親の信頼度は、マイナス側に振り切れている。それをゼロに戻すところから始めないといけないのに、サンギータの両親にはそのつもりがまったくないんです。父親は自分の思い通りに行かなければ『それは間違ってる』と断じるし、母親は『可哀想な自分がまず救われたい』と思っているしで、そもそも信頼云々の話ができる状態にない。

本当に難しい話です。

大人であるはずの両親の方から成長してもらわないといけないわけですし。

残念ながらティーさんにも、そこまでの力はありません。サンギータに寄り添うのが精一杯。

けれど、そうやって自分にできることをやろうという姿勢を、ミコナは間近で見ることができました。

「ミコナが羨ましいよ。お父さんにもお母さんにも愛されてて、その上でティーさんみたいのがいるんだから……」

途中まで一緒に帰るミコナに、サンギータは素直な気持ちを口にします。普通の大人だとここで、

『自分の親をそんな風に言うんじゃない!』

的なことを言うでしょう。でもそれは、そう言ってる本人はサンギータじゃないからそんな風に言えるだけ。それに対して、ミコナもティーさんも、自分がサンギータじゃないことを分かっているから、そんな言い方をしないんです。

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