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ミコナ

よっぽど嬉しかった

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劇が終わると、観客席からは拍手が送られました。保護者達は微笑ましそうな笑顔で。生徒達は、『出し物が終わった時には拍手するもの』という認識があるから拍手してるだけでしたけど。

何しろ、劇としての出来自体は、決して褒められたものじゃなかったですしね。大きな失敗がなかったというだけで、生徒達の演技はほとんど、

『少しポーズを付けながら教科書を音読してる感じ』

でしたから。その中でセイラだけが群を抜いて高い演技力を見せていただけで。ミコナもエティトもルプスも、熱は入ってましたけど『演技が上手いか?』と言われたらやっぱり『学芸会のそれ』って感じだったでしょう。

でも、それでいいんです。学芸会はそういうものですから。

一応は拍手を浴びて、タムテルもホッとしていました。大きな失敗をしなくて本当に良かったと安堵していました。母親が見に来ていなかったことが逆に良かったのかもしれません。母親に見られていたら緊張で固まってしまっていたかも。

最後の挨拶をして舞台袖に移動しようとした時、何となく体育館の上の方の窓を見たら、そこにフカの姿が見えて、

「あ……!」

タムテルは嬉しそうな表情になりました。母親が見に来てるよりよっぽど嬉しかったんでしょうね。

そして小さく手を振りながら、舞台袖へとけていきます。それを見送っていたフカも、ヒレを振っていました。

本当は体育館脇の、学校の敷地内と外を区切る塀に沿って植えられていた木の枝から見てたんですけど、思わず体育館の窓のところまで行ってしまってたんです。

タムテルのことが気になったから。

そんなフカのことを、ウルとティーさんとガーが笑顔で見ていたのでした。

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