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ミコナ

新しい結末

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「でも、そんなことをしたら君は」

「君は大丈夫なんですか」

科学者達がそう声を掛けると、

「いいんだ。これはそのための体だから」

宇宙人が応えます。だけど演じているタムテルは、

『なんでこんな奴らのために僕がそんなことしなきゃいけないんだ!?』

と感じていました。ただ、元々はそのまま宇宙人は石になってしまってみんなが涙するという結末だったのを、セイラの提案で変更されたんです。ミコナの案を採用する形で。だからタムテルも、練習を続けることができた。元の結末だったら、もしかすると途中で嫌になってしまっていたかもしれません。

最初は面倒だから適当にやっておけばいいと思っていたけれど、多少なりとも気持ちを入れてできるようになったからこそ納得できなかった展開を、セイラとミコナが変えてくれたんです。

そうして、セイラが提案しミコナが考えた結末に向けて、タムテルは演じ続けます。

自分の体を薬の材料として使うことで、やがて石になってしまって、動かなくなる。薬のおかげで病気が治った男の子と女の子がそれを知って、

「どうして…?」

「どうして私達なんかのために……!」

と泣くのです。するとそこに、

「泣かないで。僕は、ちゃんと故郷に帰れたから」

という言葉が聞こえてきました。

「僕の星から君達の星に行くにはあまりにも遠すぎて、そのままでは行けないんだ。だから僕の意識だけを、薬の材料が手に入る星に飛ばして、そこで仮の体と宇宙船を作って君達の星へと向かったんだよ。だからその役目を終えた体は石になってしまったけど、大丈夫、僕は元気だよ」

とのこと。

「よかった!」

「よかった!」

男の子も女の子も科学者Aも科学者Bも喜んで、大統領も、

「感謝します」

と頭を下げたのでした。

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