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ミコナ

今の時代にそぐわないと思うんです

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『今の時代にそぐわないと思うんです』

セイラのその言葉に、他の生徒達も、

『ああ……』

という表情になりました。確かに、今のこの世界は、『誰かの犠牲の上に』『誰かに大きな負担を押し付けて』というそれまでの価値観からの脱却を目指しています。

だから、石になった宇宙人の話の舞台になった時代みたいにものすごい速度で発展するような世界じゃなくなりました。ゆっくりとゆっくりと、急ぐことなく前進を続けることを目指しているんです。

当時は、

『猛烈な勢いで発展しなければ社会は衰退する!』

と言われていたんですが、この世界の歴史を、文献とかが残っている三万年ほどを振り返っても、たった二百年程度でそんなに急速に社会が膨張した時期は他にありません。

文献が残されるようになるまでの十万年でも、石器時代が七万年(石器時代全体では二百万年とも言われています)、土器時代が二万年、青銅器が使われ始めてから鉄器に移行するまでだけでも一万年という時間を要しているのも、発掘調査などで分かっています。

そして文献が残されるようになってからも、少なくとも二万年くらいの間は大きな変化がなかったことも分かっているんです。しかも、かつては<魔法>と呼ばれる技術が存在したとも。二万年の間は、<魔法>が発展し栄えた時代だと見られています。

けれど、一万年くらい前にその<魔法>が廃れて、代わりに<科学>が発展し始めた。

どうやら、<マナ>が魔法の素であり、人間にもかつてはそのマナを魔法という形で利用する器官が備わっていたらしいんですが、退化によりそれが失われてしまったとも言われているんです。

だから人間は、魔法の代わりに科学を発展させてきたのだと。

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