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ミコナ

演技

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セイラは別として、ここまで誰もまともに演技をしていません。だけど、それでいいんです。

学校の学芸会は、何のためにするものですか? 観客からお金を取って湧かせるためにするものですか? お客に商品を届けるためにするものですか?

そうではないですよね? 教育の一環として、お金に拘らなくても、観客を湧かせることができなくても、演じた子供達がそこから何かを学べればそれで十分、意味はあるんですよね。

そして逆に、何も学べなかったのなら、実はそれはそれで意味がある。

観客からお金を取ればそれに見合ったものを提供する責任が生じます。でも、お金を取らないからこそ、自分達だけに意味があればそれで許されるんです。

学校生活の一ページとして、『つまらなかった』『恥ずかしかった』『面倒臭かった』という個人の感想が残ればそれでいい。記憶の片隅に残ればいい。そしていつか、何かの拍子に思い出して、面倒臭いからと手を抜いた自分を恥じたりすることでもあれば、当人にとっては十分以上に価値があるでしょう。

同時に、何の価値もなくてもそれでもいい。それが許されるのが、学芸会というものでしょう。

何も気負う必要はない。誰かに対して責任を負ってるわけでもない。

それまでの学習の成果として行うという一面も確かにあるでしょうけど、それは単に教師がどれだけ生徒に学ばせることができたかというだけの話であって、生徒に責任があるわけじゃありません。

マインも、それは分かっています。だから学芸会だけ熱心にやって取り繕えばいいというわけじゃない。

彼女がミコナやソリティに対して気負い過ぎていたのは、あくまで幸せになってほしかったから。自分の評価を上げるのが目的ではないんです。

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