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ミコナ

睡眠不足で挑むなど

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『オレ達にも責任のあることだけどな……』

『俺達は皆、共犯者だな』

「そうだね……」

フカやオウの言葉に、ハカセも、深く頷きました。その上で、

「でも、だからこそ、始めてしまったことはちゃんとやり遂げなければいけないと僕も覚悟してる」

とも。そんなハカセに、

「ああ」

「もちろんだ」

フカとオウも、頷きます。別れが決まっているなら、だからこそちゃんと向き合わないといけない。ミコナのママが、ルリアが亡くなる時にも、ハカセはそれを心に刻んでいました。ルリアが亡くなる現実から逃げて見ないふりをしないと心に誓ったんです。父親の自分がそんなことをしていたら、幼いミコナも、現実に目を向けることができない人間に育ってしまうかもしれないと思ったから。

もちろん、現実を見るのは辛い。ルリアを喪うのは辛い。辛いから、かぷせるあにまるを作ることを決意した。だけどそれは、ルリアを喪うという現実のその先にあるものを目指してのことだというのも事実です。

だったら、それを目指した途中にあるものについても、ちゃんと目を向けないといけない。

ミコナに、人としてどう生きていくべきか、その手本を示すために。

「まあ、オレ達もやれることはやるさ……」

「そういうことだ」

フカとオウのその言葉に、ハカセは励まされるのを感じます。やり遂げなくちゃと思える。でも、

「でも、その前に、ちゃんと寝ろ」

「だな。睡眠不足は脳の働きを阻害する。睡眠不足で挑むなど、仕事への冒涜だ」

フカとオウ、揃ってハカセを指さし、言いました。それがまたルリアの姿を思い出させて、

「あはは、確かにね」

ハカセは笑いながらお風呂へと向かったのでした。お風呂でさっぱりして、ちゃんと眠るために。

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