上 下
211 / 837
ミコナ

レムライ一世

しおりを挟む
<マナ変換炉>というものは、以前にも説明したとおり、この世界に満ちている<マナ>をエネルギーに変換するというものです。

対して、<魂>は、マナにより、目には見えないけれど形が与えられていると考えられています。それも、科学的に証明されつつあるところ。それがどうして依代に宿るのか? 依代に宿っているのは本当に<魂>なのか? というところがまだ分かっていないというだけで。

いずれにしても魂が形を得るにはマナが必要なのは間違いなさそうなので、マナ変換炉なんかを依代にしてしまっては魂そのものが形を保てなくなって霧散してしまう。という考えが主流だったんです。と言うか、そう信じられてきた。

けれど、ハカセは、その考え方に対してずっと疑問を抱いていました。

『最初のマナ変換炉の原型が作られた時に、教皇の魂が依代から消えてしまったからずっとそう信じられてきたけど、それ以降は、具体的にそんな話は聞かれない。それはどうしてだろう…?』

と。

<教皇>というのは、ラウマ皇国という国に住むとっても偉い人で、大昔のレムライ一世という名前の教皇の魂が、神殿に祭られた神像に宿っていたそうなんですけど、マナ変換炉の原型になった装置が完成した時に、当時の教皇に祝福を与えてもらおうと持って行って稼働させたら、その日からレムライ一世の魂が神像からいなくなってしまった。ということがあったそうなんです。

それ以来、長く、

『依代の傍でマナ変換炉を使うと魂が消えてしまう』

と考えられるようになって。

その後、依代の傍で使っても大丈夫ということは確認されたんですけど、さすがにマナ変換炉そのものを依代に使おうなんていう発想は、持たれなかったみたいで。

それをハカセは逆に疑問に感じてたんですね。そして研究を続けることで、

『これはきっと関係ないんだ』

と確信するに至ったと。

しおりを挟む

処理中です...