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ミコナ

普通の家

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「お父さんとお母さんが離婚することになって、私はどうしたらいいのか分からなくて……」

マインに問い掛けられてソリティがそう口にしたことで、

「先生! そういう話は相談室でなさってください!」

声を上げた生徒がいました。セイラでした。

すると、

「あ……!」

と、マインもさすがに気分が高揚しすぎていて配慮が足りなかったことに気付き、

「詳しい話はお昼休みに相談室で聞きます」

なんとか冷静になることができました。

けれど、教室で他の生徒かいる中で家庭のデリケートな話題をそのまま口にしそうになったことで、ソリティ自身、そういうことが考えられる状態になかったことが分かり、マインにもようやく彼女が抱えている問題の大きさが実感できたようです。



こうしてお昼休みになり、改めてマインはソリティを伴って相談室へと赴きました。

「ここなら、ゆっくりお話ができます。何があったのか、お聞かせください」

ようやく落ち着いたマインが、さっきとは打って変わって静かに問い掛けます。

するとソリティが、

「お父さんとお母さんが離婚することになったんです。私はどうしたらいいんでしょう?」

改めてそれを口にします。しかし、さすがに学校側としては夫婦の問題にまでは干渉できません。

「それは……」

マインも口ごもってしまいます。

けれど、

「私は、普通の家だったらそれでいいんです……家に帰ったらお母さんが『おかえりなさい』って言ってくれて、宿題して、家の手伝いして、お父さんが仕事から帰ってきて、それでお父さんとお母さんと私とで晩御飯を食べてって、そういう普通でよかったんです……

なのに、普通って、そんなに難しいものなんですか……?」

それまでの寡黙が嘘のように、ソリティの口から関を切ったが如く言葉が溢れたのでした。

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