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本当に生き生きと

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ガーとシャトルを夢中になって打ち合うルイネの表情は、とても真剣で、でも同時に本当に生き生きとしているものでした。

ミコナもエンファも、そんなルイネに、

「そこだ! いっけえ!」

「ルイネ、がんばれ!」

と、声援を送ります。ガーにはもちろん、ティーさんとウルが、

「そこや!」

「負けるな!」

と。

実際にはガーが少しだけ手を抜いているのですが、ルイネが打ち返しやすいように打っているのですが、だけどルイネも、しっかりと食らいついてくるぐらいですから、実は結構、上手なんでしょうね。<才能>があるかどうかはともかく。

だけど、マナがある限り力が尽きることのない<かぷせるあにまる>のガーが相手ではスタミナで勝ち目はありません。

さすがに疲れて動きが鈍ったところに、ガーが勝負を決めるスマッシュ。

ラケットが届かずシャトルが地面に落ちると、

「あー! 負けたぁ!」

ルイネが悔しそうに天を仰ぎます。

でも、悔しそうなんですけど、息を切らしてるんですけど、満面の笑顔なんです。すごく満たされた感じで。

いえ、本当に満たされているんでしょう。満足しているんでしょう。

人生は何もかも上手くいくわけじゃありませんけど、その中でもこうしてしっかりと満たされた気分になっていれば、他に不満があっても贖えるかもしれません。

事実、この時のルイネは、いろいろなモヤモヤも吹っ飛んでる状態でした。

ルイネの家庭の事に口出しはできませんけど、せめてこうやって彼女を満たしてあげることで、少しでも助けになればと、別にそんなに意識してやってることでもないですけど、無理なく力になることができれば、ルイネもルイネの両親も、救われるのかもしれません。

ぜひそうなって欲しいものです。だって、せっかくこうやって知り合えて、仲良くなれたんですから。仲良くなれた相手が辛い思いをしてるなんて悲しいじゃないですか。

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