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才能の壁に阻まれる現実

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ルイネの両親は、スポーツについて、ただの遊びとしては許可しつつも、それを応援しようとはしなかったのです。彼女がバドミントンのラケットをねだっても、駄々をこねる彼女をなだめすかして着せ替え人形を買い与えるという形で。

その上でスポーツよりも勉強だと、彼女を塾に通わせたりもしました。

でもルイネ自身は、勉強にはあまり興味が持てなくて、それよりも両親がやってたバドミントンに関心があったのにラケットさえ買ってもらえなかったことが不満で、強く反発することはないものの、内心では決して小さくない不満を募らせてもいたのです。しかもそれは両親の言うことには従いたくないという、決してささやかではない反抗心として彼女心の奥底で静かに育っていました。

でも少なくとも今のところは、こうしてミコナ達と遊んでいると、少しはマシになります。気持ちが癒されて落ち着くのです。でも、逆に言えば、ミコナ達と友達になっていなければその不満が表に吹き出して激しく反抗していたかもしれない。

ルイネの不満は実はそのくらい根強いものでした。無理もありません。だってルイネは、バドミントンを真剣に頑張っていた両親のことを、

『かっこいい!』

と、幼心にも憧れていたからです。だから自分もそんな両親と同じようにバドミントンをやってみたかった。そんな彼女の気持ちを、他ならぬ両親が認めてくれなかった。それが幼いルイネの心を、どれだけ傷付けたことでしょう。

だけど同時に、どれほど打ち込んでも才能の壁に阻まれる現実の残酷さを嫌というほど思い知った両親が、『娘には同じ思いをさせたくない』と考えるのも無理はないのでしょうね。それが分かるから、ルイネが両親に対して少なからず不満を抱いていることに気づきながらも、ハカセは口出ししようとは考えていませんでした。

ただただ楽しく遊んで癒されてくれればそれでよかったんです。

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