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だからミコナは

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学校の近くまでくると、ルイネとエンファが、

「おはよう!」

と声を掛けてきました。

「おはよう!」

ミコナもそれに応えて、並びます。

それを見届けたフカは、

「じゃあな……」

と一声掛けただけで飛び去っていきました。ここから先、自分がいても野暮なだけだと分かっているんでしょう。

「ありがと!」

ミコナはそんなフカを見送りながら、手を振りました。

すごく不器用で、でも本当はすごく優しい、みんなが幸せに生きられる世の中になってほしいと考えてるフカに、ミコナは感謝しています。

ミコナのその声を背中に感じながらも、フカは振り返ることもなく飛んでいきます。

そのフカの見てる前で、携帯端末を見ながら信号無視したり、自転車用のレーンに自動車を止めたり、歩道を横に並んでふさいだりしてる、何人もの大人の姿がありました。

正直、そういうのも片っ端からとっちめてやりたいとフカは思います。だけどそんなことをすればミコナがどんな表情をするか……

そしてミコナは、今、フカが見ているようなことはよくないと知っている。歩きながら携帯端末を見つつ信号まで無視しなくちゃいけないほど精神的に余裕がないわけでもない。たった何十秒や何分が待てないほど追い詰められてもいない。

『時間を無駄にしないため』とか言い訳しながら他人を危険に曝したりもしない。

そんな言い訳しなくても、ちゃんと学校には間に合うように家を出るし、ハカセとしか繋がらない<ミコナフォン>しか持ち歩かなくても不安になったりもしない。ルイネやエンファは、秒で返信しなくちゃ関係を維持できないような友達じゃない。

だからミコナは、とても穏やかに笑うことができるんです。

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