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ママが教えてくれたから

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フカにも分かってるんです。悪人をボッコボコに痛め付けたからって実は本当に反省なんかしないってことは。その時は反省してるふりをしても、どうせそのすぐ後でまた悪い気持ちが頭をもたげてくるってことを。

それどころか、『仕返ししてやる!』みたいなことを思ってしまうのが人間というものだと。

人間は知恵を持った生き物です。自分の力で敵わないとなれば、仲間を集めたり武器を使ったりすることで、自分より強い相手をやっつけようとできてしまいます。力の差を見せ付けたって、その力の差をどうすれば埋められるかを考えることができる生き物なんです。だから、力で痛め付けたって、『喉元過ぎれば熱さ忘れる』な感じで痛みを忘れることができてしまう。

だから本当は、そんな風に悪いことができてしまう人に最初からしないというのが大事なんでしょうね。

ママは、それを分かっていた。分かっていて、実践しようとしていた。自分がミコナにとってとても大切な人でいることを心掛けて、それをミコナに実感してもらうために、彼女をとても大切にしていた。

ママが自分を大切にしてくれてるのが実感できるからミコナもママのことが大好きで、とても大切だった。そのママが悲しんだり苦しんだりするのが嫌だから、ミコナは、人を傷付けたりするのは良くないとすごく実感できてたんです。

その上で、他の人にも自分と同じように大切な人がいて、その人を大切に思ってる人がいて、だから誰かを傷付けるというのは、傷付けられた人を大切に思ってる人のことも同時に傷付けることなんだって、ミコナは知っていました。

ママが教えてくれたから。

それができるのが、ミコナのママだったんですね。

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