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不器用な者同士

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フカに、風で飛ばされた帽子キャップを取ってもらったお手伝いさんは、

「ありがとうございます」

と、もう一度お礼を言った後、

「せん……あ、いえ、フカさん。私、カリナっていいます。よろしくお願いします」

『先輩』とつい言いかけて言い直し、改めて自己紹介しました。でも、フカは、

「お前の名前なんか、どうでもいい。オレにとって大事なのは敵か味方かだけだ……でも、お前はどうやら敵じゃないみたいだな……」

お手伝いさんの<カリナ>の方は見ずに、周囲を見回しながら、フカはぶっきらぼうに応えただけでした。

だけど、『敵じゃないみたいだな』という言葉に、カリナの表情が柔らかくなります。

「はい。私は、皆さんの味方です」

って、微笑みながら。

「ふん。味方、か。当てにはしてないが、足は引っ張るなよ」

フカのそんな言い方にも、

「分かりました。頑張ります」

また深々と頭を下げました。

こんな平和な街で何が<敵>か<味方>なのかはさっぱりですが、ただ、フカとカリナの間では何か通じるものがあったようです。

もしかすると、不器用な者同士で共感したということでしょうか。

それはまだよく分かりませんが、とにかくカリナは仕事に戻り、庭の芝を整え始めました。その様子がどこか楽しそうにも見えるのは気のせい?

いずれにせよ、一通り芝を整えた頃にはお昼の時間だったので、芝刈り機を片付けたカリナは、フカに向かって頭を下げて、家に戻ります。

そして、ウル達と合流。

「よし、じゃあ昼食の用意だ」

「了解やでぇ~!」

カリナを迎えてウルとティーさんが声を上げたのに、

「男子厨房に入らず。お前達は勝手にしろ」

オウはまた棚の上に戻ってしまいまったのです。

だけどそれには構わず、ウルとティーさんは、ガーとカリナを伴ってキッチンに向かったのでした。

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