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寂しかったんだ

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ミコナの家庭はとても穏やかでした。騒々しくはないけど明るくて、ほのぼのしてて、居心地がいい。

ハカセも、すごく気の利いたことを言ってくれるとか軽快なジョークで楽しませてくれるとかじゃないけど、すごくあたたかい心の持ち主だというのはミコナにも伝わっています。

でも、これからは少々賑やかになりそうです。

<かぷせるあにまる>達が加わったから。

ミコナが宿題をしている時も、

「む…ここはこうじゃないか?」

ウルがミスを指摘すると、

「あ、ミコナはん、誤字発見!」

ティーさんも負けじと指摘します。

「あはは、厳しいな」

これにはミコナも苦笑い。

実はママは、ミコナが宿題をやってる間はそんなに口出ししてきませんでした。答えに詰まってる時にはアドバイスもしてくれましたけど、まずは自分でやらせてみようという方針だったのです。

だけど、ウル達は、五つに分かれてしまったことからかママが持つそれぞれの考え方が表に出るようになってしまったのでしょう。ママとして一つにまとまっている時には、ママの中で考えて整理がついてから口に出していたものが、そのままそれぞれの口を通して出てしまうから。

人は、その時その時で、自分が思い付いたものをすぐに口に出していいのかどうかを無意識のうちにでも考えています。経験を積むことで、取捨選択を行えるようになっていくのです。

でも、今はそれがない。

『でもまあ、いいか。楽しいし』

ミコナもそう思うようにしました。

そして宿題が終わると、次はお風呂です。

「ね! みんな、一緒に入る?」

ミコナがそう提案すると、

「え? でもいいのかな」

ウルは戸惑い、

「ワイは別に平気やけど、いいんでっか?」

ティーさんも遠慮がちに言います。

するとミコナは、

「いいんだよ。みんなはママなんだから。お父さんは一緒に入ってくれないけど、ホントは一人で入るの、寂しかったんだ」

ちょっと寂しそうに微笑んで言ったのでした。

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