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マナ

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お手伝いさんは、しばらく黙ってミコナとハカセが穏やかに食事をしているのを見守って、それから、

「では、本日はこれにして失礼します……」

そう言って頭を下げました。

「お疲れ様でした」

ミコナは丁寧に頭を下げ、

「お疲れ様でした……」

ハカセはちょっと遠慮がちに言いました。

いつもすごくお世話になってることで、ちょっと引け目を感じているんです。

だけどお手伝いさんとしては<仕事>としてその分のお給金もいただいているのでそこまで気にする必要はないはずですが、それを気にしてしまうのがハカセという人でした。

発明に没頭してしまうと何もかも吹っ飛んでしまうのに、実はそういう一面もある。

ハカセが<かぷせるあにまるず>を作ろうとしたのも、実はそれが理由の一つでした。自分の手が離せなくてミコナを一人にしてしまう時、お手伝いさんがお仕事の時間が終わってもミコナを見守ってくれていることがあるのも知っていたのです。それが申し訳なくて、ママとそのままお話しできればお手伝いさんにそこまでしてもらわなくてもミコナも寂しくないに違いないと思って。

すると何だか思った以上に賑やかなことになってしまった。けれど、逆にそれだけ楽しくなりそうで。

もちろん、最初の目的である『ミコナがママとお話しできる』のは目指しつつも、そんなに慌てなくてもいいかもしれないとも思ったり。

でも今はとにかく、お手伝いさんが帰っていくのを見送りつつ、ちゃんと時間通りに仕事を終わってもらえてホッとしていました。

ところで、ウル達<かぷせるあにまる>は、動物みたいな姿をしていても動物じゃないので、ご飯は食べません。

この世界には空気と一緒に普通にある<マナ>と呼ばれるものをエネルギーにしているので、ご飯は食べなくていいんです。

そして<マナ>は、亡くなった人達の<魂>がこの世界に存在するためにも必要なものなのでした。

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