上 下
6 / 837

あたたかいね

しおりを挟む
ウルは続けます。

「僕は、ハカセがちゃんとやれてるかどうかも確かめに来たんだ。でも、今のミコナを見てると、大丈夫だって思った。安心したよ」

そんなウルにミコナは、

「うん。パパは私をとっても大事にしてくれるよ。だから私もパパを大事にしたいんだ」

と返します。

すると、ガーが、ミコナの胸に顔をうずめて、甘えるような仕草を。

「ガーはとても臆病だからね。相手の嘘を見抜くんだ。そのガーが甘えられるってことは、ミコナの言葉に嘘がないってことだよ」

ウルの言葉に、ミコナはさらにガーを優しく抱きしめます。なんだかとても胸があたたかい感じ。

『ママ……』

不意に蘇る記憶。今よりもっと小さかった頃にママにこうして抱きしめてもらった時の。

だから、思わず、ウルのことも手にして、同じように抱きしめてしまうのです。

「あたたかいね、ミコナ……」

ぬくもりを確かめるようにウルも身を寄せてきます。

そんな様子をに気付いて、

「あ! なんやウル達だけで! ずるいやおまへんか!」

ティーさんもポーンと体を弾ませて飛び込んで。

「おっととと」

ちょっと焦ったけど、ミコナはちゃんと抱き止めてくれます。

「ミコナはん、ええ匂いしまんなぁ……」

ウルやガーと一緒にミコナの胸に顔をうずめるティーさんがしみじみと。

なのに、オウとフカは、

「まったく、軟弱な奴らだ」

「けっ! オレは懐柔されたりしねーからな!!」

とか言って、そっぽ向いてる。

だけど、ミコナは嫌な気持ちにはなりません。オウやフカは、ママの、

<照れくさかったり反発してしまったりで素直になれない部分>

なんだと分かったから。

だからまた思い出します。何が原因だったかは思い出せないけど、すごく拗ねてしまった時に、ママに甘えたいのに素直になれなかったことを。今のオウもフカも、あの時の自分と同じなのかもと。

だったら今は無理はしないほうがいいと思うのです。無理に近付こうとしても、自分にも覚えがあるけど、余計に素直になれなくなるから。

それが今のミコナの答えなのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...