ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成

文字の大きさ
上 下
69 / 100

秦 VS ジェイソン

しおりを挟む


スカッシュをした空間でアメリカのSランクハンターと中国勢のSランクハンターが向かい合い武器を構える。
中国のハンターはオーソドックスな長剣でアメリカのハンターは両端に刃が付いている少しだけ変わった槍を持ち構えている。

既に戦いは3戦していずれも中国が勝っている。
それぞれの国のハンターの特色としてアメリカは力重視、中国は技術重視なのだ。
対人戦ならばアメリカが中国に勝つ事はほぼない。
アメリカは大型のモンスターが現れやすく中国は人型のモンスターが現れやすい。
そこから自然と戦い方は決まっていった。

今戦っている2人のハンターはその両国の特色が丁度真反対だった。
力強く斬りつける中国のハンターに対し、アメリカのハンターは両端に付いている刃を利用して長剣を絡めとったり高飛びの要領でジャンプして攻撃を避けたりしている。

「はぁぁぁ!!!」

「ふんっ!!」

棒術も納めているアメリカのハンターは上手く中国ハンターの長剣をいなして刃をその首に添える。

「……!!」

(やっと一勝か。アメリカより対人戦に特化している国とはいえ3勝も取られたのは屈辱的だな)

武器を収納し中国のハンターと軽く握手をすると自分達の仲間がいる部屋に戻る。

「悪いマイケル負担を掛けちまったな」

「気にしないでくれジェイソンさん。俺自身の対人戦の能力が低い事を知れたいい経験だからな。負けたのは確かに悔しいがそもそも専門分野が違うからな。そこまで悲観する事じゃあない」

マイケルの言葉通りだった。
大型のモンスターを日常的に相手するアメリカと人型のモンスターや暴走するハンターを常日頃から相手する中国では能力に差が出るのは当たり前だ。
対人戦の能力の低さをアメリカ勢は嘆いているが逆に中国勢はアメリカハンターの暴力的な力に苦悶の表情を我慢出来ずにいた。

「クソッ!なんて馬鹿力だ!!魔力で手首を回復させてもまだ痺れる!」

「我々には無い物だ……あちらも我らの技術を羨んでいるだろうな」

「日本で言う隣の芝生は青いっていう諺か?」

「「それだな」」

アメリカと先に戦い勝利を収めた3人は談笑している。

「アメリカのハンター達と上手く連携をすればハンターの実力向上にもつながり結果として国力に繋がる……アメリカと今以上に交流をした方が良さそうだな」

リーダー格が顎に手を当てぶつぶつと呟く。

「日本とは猫娘と冥凜が嫁ぐ………予定だが。アメリカには誰を行かせるべきか?」

本人達の意思を最優先にしているとはいえ恋愛を政治に持ち込むこのハンターはかなり曲者だろう
まだ猫娘と冥凜が真、獅堂と結婚するとは何一つ決まっていないが日本人の性格上無視できない事を見越し妻というポチジョンではなく最低でも友達、良くて同居人と考えていた。

デルガがいる真にはとてつもない迷惑だが彼女いない歴年齢の獅堂には効果があった。

「リーダー次誰が戦う?そもそも力は示したから良くない?」

「最後は……私が出よう。私が出ればあちらも必然的にジェイソンを出さなくちゃいけなくなる」

仮面を着けたリーダー格は静闘争死亡後に繰り上がりで中国最強の名を受け継いだ人物だ。
それほどの手練れなのだジェイソンが出てこないと他のハンターでは相手にならない。

リーダーはスカッシュをした部屋にゆっくり歩きながら向かう。
部屋に入ると同時に別の扉からジェイソンが出てきた。

「お互い考えている事は一緒みたいだな仮面の」

「だろうな。ジェイソン……お前とは一度戦って見たかったよ」

お互いに武器を構える。

「《来い秦王の義手》」

「《来い雷桜の一神》」

リーダー格が装備した物は一時的に自身の両腕を超性能の義手に変える物。
大破したりすれば義手が消えて元の手に戻る。
腕限定ではあるが最強の攻めと防御を兼ね備えている。
世界的に見ても遥かに優れた装備で中国では個人が持つには過ぎた物と言われ国宝級と認定されている。

一方ジェイソンが持つ《魂》の武器は全身一式の装備とトンファーのような持ち方をする手斧だった。
その姿はまるでデルガやアグリードを彷彿とさせる。

「秦良菊。中国最強に繰り上がったSランクハンター」

「ジェイソンだ」

名前を言い終わると同時に2人は全身に魔力をこれでもかと伝え纏う。
魔力が行き渡るとほぼ同じタイミングで部屋の床を踏み抜く。

銀腕と手斧が交わり火花と壁を隔てていても別室まで聞こえる金属音がなる。
真や獅堂は思わず耳を押さえた。

「ゴリラ見たいに図体がデカいクセして中々早いな」

右腕で受け止めた手斧を振り払い左腕をジェイソンに向けて振るう。

「おっと!見た目通り……いや、見た目以上のスピードとキレ。正直相手にしたくない」

トンファー型の手斧を器用に使い秦を退ける。
武器の特性もあるせいか2人の戦いは徒手空拳がメインとなっている。
2人の戦いを観戦している人達はまるで資金を潤沢に使ったアクション映画を見ているような気分だった。

どちらの技も力も世界最高峰で最強格
興奮するなと言う方が無理なのだ。

「うぉらぁぁぁあぁぁぁあ!!!!」

ジェイソンが手斧を振るうフリをして肘打ちで秦の顔を殴打、吹き飛ばす。

「がっ?!」

追撃とばかりに手斧を振るうが体勢を立て直した秦に簡単に銀腕で防がれてしまう。

「その拳術もそうだがその銀腕……なんて硬度をしている!!まるでSランクの中でも最上級のモンスターを殴っている気分になる!」

「お前こそ殴っても動じないのは好きだぜぇぇえ!!」

銀腕でそのまま手斧の刃を殴る。
常識で考えるのならば銀腕が負けるが事この2人の勝負にはそんな常識はない。

2人の戦闘は激しさを増していくばかりだった。

「獅堂、俺は一応確認出来る限りだも1番レベルが高いらしいけど……この2人にまだ勝てる未来が見えない」

「俺の意見だが真より1つを突き詰めた結果のように思える。Sランクハンターを名乗っているからある程度の練度で武器は使えたとしても……」

「そうか、早く……早くデルガと模擬戦して自分を磨きたい」

真は徐々にバーサーカーよりな思考に近付いて来ている
それに気付くがツッコミを入れれば負けた気がすると感じ獅堂は踏みとどまった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...