上 下
67 / 100

女の争い

しおりを挟む


「えっと……」

「よろしくね?2人とも」

「「よろしくなぁ!!」」

若干に自棄になりつつも返事はしっかり返す。
そんな2人の後ろにゲートが開く慣れ親しんだ2人は嫌な予感を感じつつもあまり反応を示さなかった。
しかしそんな事を知らないアメリカと中国のSランクハンター達は一斉に武器を構え2人の後ろに出現したゲートを睨みつける。

1人の女性が態と足音を鳴らしてゲートから現れた。
その原因をはっきりと自覚している2人は体が強張るのが良く分かった。
2人な怖くて振り向けなかった。
原因は真だけだが巻き添えを喰らう事を半ば確信している獅堂も怖くて振り向けない。

「主様」

「……はぃ」

「私の視界に入っている獣人種が主様のパートナーとなると聞こえましたが………どういう事で?嗚呼ご友人である獅堂さんはご関係がありませんねぇ?」

「「ゔっ」」

関係が無いと言われてもそこはかとない殺気には勝てないのだ。

「そこの仮面の女パートナーとは……一体どういう意味で言っている?返答次第では死も覚悟しろ」

通訳が若干震えながらリーダー格にデルガの言葉を伝える。
デルガの言葉を聞くと仮面越しに顔を覆い空を仰ぐ。
強く緊張しているようで手が微かに震えている事に真は気付く。
深呼吸をして息をゆっくり吐き出すと拳を握りパートナーの意味を話す。

「2人は我ら人類がモンスターに打ち勝つ為に研究した獣人化実験の成功者だ。
成功して強靭な肉体に体が変化した」

通訳を介したリーダー格の言葉にデルガを眉を歪める。

「しかし彼女達に組み込んだ獣のある特性も受け継いだ、それが今回の原因。我ら祖国の戦力が減るの些か不本意だが彼女達に暴れられたら手が付けられない」

デルガは獣のある特性の部分に過敏に反応する。
その顔は何か分かったようだが確信に至っていない疑問を抱えた顔だった。

「その特性とはなんだ?主様を害する事なら全員皆殺しだぞ」

声は荒げないが静かに怒る。

「待って欲しい!今説明した通りパートナーにしなければ損をするのは我ら!そこの少年を害しようとする意図は!ない!」

「ならばその特性とやらを教えろ!」

リーダー格は心の中で「怒られるだろうな」と諦めつつその特性を伝える。

「その特性とは強者に惹かれる事、つまりそこの少年達の夫婦になる事を望んでいる」

「「ブフォォオ?!」」

リーダー格の言葉に当事者の真と獅堂は恥も外聞もなく盛大に吹き出す。
そしてこの後自身の身に起こる惨劇を予想出来ない事が命運を分けた。

「誰か知らないけど結婚していないなら別に夫婦になっても良いよネ?」

「強い人に惹かれるって意外と生きるの単純になって楽になったから私は歓迎ネ」

「ガハッ」

デルガが猫娘の悪気のない言葉に幻影の血反吐を吐き胸を抑える。
背中が心無しか煤けるが直ぐに復活して2人に反論する。

「夫婦になりたいのだもしても主様には私がいる!!死ぬ瞬間までな!つまり貴様ら小娘の出る幕などない!」

これが遠回しな真へのプロポーズになってしまっているが本人は全く気付いていない。
リーダー格の前に立ちはだかってデルガの後ろで真は顔を真っ赤にして手で顔を隠していた。
アメリカ勢の日本語を理解している人達のうちの1人が「ヒュ~」と口笛を吹いた事で更に追い込まれ少し離れた机の下に隠れて蹲ってしまう。

(真、首も真っ赤だな……アレ?でも両名という事は俺に春が来たという事なのでは?)

真が羞恥に身を焦がしている時に獅堂は意外にも前向きであった。
それもそうだろう何せ今まで彼女など出来た事がないのだから……。

(骨は拾ってやる真)

羞恥に殺されそうな真、春の予感を噛み締める獅堂を他所にデルガと猫娘と自称シャンシャンは激しい口喧嘩をしている。
呆気にとられるアメリカ勢とリーダー格、猫娘、自称シャンシャン達の後ろにいる中国勢。
羨ましさに国境など無いのか両国のハンター数人が中指を真に向けて立てている。

「主様も何か言って下さい!!!主様にはこのデルガだけでいいと!!!」

口喧嘩をしながら真に援護射撃を求めるが反応が返って来ない。
不審に思ったデルガと猫娘は真を探しその姿を見つけると競うように駆け寄る。

「主様!この小娘に要らぬと言ってくだ………さい。あの、主様どうされましたか?」

「あ~、どうしたのネ?気分でも悪いね?」

猫娘が真の肩に手をかけようとするとデルガがその手を叩き落とす。

「……何する」

「皮が剥がれかかっているぞ?猫を被らない事だな」

「喧嘩売ってる?」

「無い胸で喧嘩を売られても……ぷっ」

「上等じゃぁぁぁぁあぁあ!!!覚悟しるぉああぁぁあ!!!!」

デルガが猫娘を鼻で笑った事により真の側でまた新しい(女の)戦争が起こる。
その戦争の原因である真は思考停止をしている。
また新しいゲートが開きアグリードが現れると真の肩に触れる。
戦争を起こしているデルガと猫娘以外の手が置かれゆっくりと顔を上げる。
手を置いた人物の顔を確認すると希望を見出したのか笑顔が溢れる。
しかし

「主様……姉上はああいう乱暴な一面がありますがしっかりと尽くすタイプですので……諦めて下さい」

まさかのアグリードでさえ外堀を埋めにかかって来た。
しかしアグリードが言う通りデルガは悪魔という特性と本人の特性も合わさって裏切らずそして尽くしてくれるタイプなのだ。
「デルガだけなら……」そう真は考えた、考えたが状況が状況の為にそうも考えられない。

獣人になった為に強い者に惹かれる猫娘。
そんな猫娘を排除したいデルガ……一夫一妻な世の中でこの状況。
真の胃に短時間で穴を開ける勢いでストレスとなる事は言うまでもない。

真もまた獅堂と同じで彼女など出来た試しがない。
片や直球で夫婦になろうと片や遠回しに夫婦になろうと大勢の前で告白をして来た。
まだ18歳のR18の世界に生きてはいな真は耐えられず遂に



腹を下した。

「ごめん……トイレ行ってくる」

そのトイレに向かう真の背中を見た者は張り切って立てた中指も下げたという。
デルガと猫娘がトイレに消えた真に気付いたのは10分後だった。

「争う相手がいないのは楽ね」

自称シャンシャンの一人勝ちである。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話

亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。

処理中です...