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機嫌

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「それじゃあここでオサらばネ」

「このマントは本当助かるから大事にするネ」

「多分また会うと思うかラ楽しみにしてるネ」

「ではお気をつけて」

「またね~~」

猫耳中華娘2人が来たゲートの所に案内する。
出現した部分は真と獅堂が出たゲートの位置から1キロほどしか離れていなかった。
この2人がかなりの方向音痴だった事を知り何故2人だけで入ったのか疑問に思った。

手を振り見送る。
猫耳中華娘達の姿が完全にゲートの中に消えてゆく。
そしてゲートは徐々に小さくなり完全に消滅した。
振っていた手を下ろして今度は自分達が帰るために出て来たゲートに向かう。

ふとぽつりと獅堂が言葉を溢した。

「猫耳……触って無くない?」

「……あああぁぁぁぁあぁ?!モフってねぇ?!ちくしょぉおぉぉおぉぉ!!!」

猫耳中華娘2人を助けた目的がその猫耳を触る事だったが戦闘や移動ですっかり忘れていた。
膝をつきまぁまぁ本気の嘆きを2、3分叫ぶと漸く立ち上がり泣いた形跡のある目を擦る。

「……帰ろっか」

「うん……」

時間は16時。
ダンジョンの梯子はもう不可能だ。
ゲートを潜り渋谷の中心に出るとゲートが2秒程かけて消える。

通行止めになっていて人もかなり集まっていた。
スマホを掲げて動画や写真を撮っている者もいて少々騒がしかった。

「獅堂騒がしいから俺ん家来い」

「アイアイサーー」

真は通行止め、交通整備をしていたハンターに帰る事を伝えてその場から跳躍して建物の屋上に乗る。
獅堂も後を追うように跳躍して建物の屋上に飛び乗り走り出す。






「ふぁぁあー!!!すっきりしたぁ!!真~!シャワー助かったわ!」

「意外と風呂広いだろ?」

「だなーー!!」

男子特有の妙なテンションで風呂上がりに談笑をする。
そして響ががリビングで待っていた。

「お兄にゃーん獅堂さーんご飯出来たよー!」

「マジ?ありがとう響。お礼として高いシャンプーを買うことを許そう!」

「やったーー!!」

「響ちゃん響ちゃん!お礼として僕はどうかな?!」

獅堂が響に擦り寄ると真がガシッとその首を掴んだ。

「………ちゃうねん」

「獅堂君?響に手を出したら1人で鍛錬5時間コースに行かせるからな?」

軽く脅しを入れると光の速さでご飯が並べられている席に着く。
溜息を吐くと真も響も席についた。
「いただきます」と言う前に響が遮りに真に質問をした。

「お兄ちゃん」

「何?」

「デルガさん……どうしたの?」

ピシッッ

もう何度経験したか分からないが空気が露骨に固まるのを理解した。
何度か口を開け閉めして閉じる。
数十秒の思考の末やっと口を開く。

「実はダンジョンに入ってからずっとデルガだけ反応がないんだ」

「ん?アグリードさんは反応してるって事?」

「そうなんだよ。言葉はデルガに聞こえてるみたいなんだけど無視されてて……」

「喧嘩したの?」

響が何気ない一言を発するとまたもや空気が固まる。

「喧嘩……じゃないけど心当たりはある……かな」

「絶対あの件だよなぁ」

真が俯き、獅堂が空を仰ぐ。
両名ともその心当たりがありすぎるからだった。
アグリードをリビングに呼ぶとすんなり現れる。

「主様、その……姉上は」

「アグリード、悪いけど、本当に悪いけど呼んできてくれない?俺が呼んでるって言って」

神妙な顔をして「……はい」と一言発するとゲートを開き入る。
1分ほどするとまたゲートが開く。
その中からアグリードが現れ続くようにのっそりとゲートから姿を現した。
その表情は見えない、見えるはずも無かった。
何故なら

「なんで完全装備なの?」

兜、籠手、鎧、全てを装備した状態で出て来たのだ。
顔を見て話そうにも兜を被っているため表情が読み取れない。

「デルガさん?あの~アレはですね?………ちゃうんすよ。アレはデルガとは関係がないやつで」

「関係がない……」

「いやいやいや!デルガを邪険にしているとかではないんだ!!ただちょっとした夢見たいなものだったから」

「…………れば」

「え?」

「言ってくれれば本物ではありませんが猫耳生やせました!!犬耳も出来ます!!兎耳だって出来たのに何故言ってくれないのですか主様!!」

(わぁ~お。これは予想外の変化球だぞぅ。擬似的に猫耳生やすって……出来んのか?いや、出来ると言ってるから出来るんだろうけどさ)

「それに……最近頼る事が少なくなっています。もっと頼ればいいじゃないですか」

「それなら関してはしっかり理由がある!今までレベル上げを手伝ってもらったのは高ランクのモンスターを狩れる力を付けるためだ!Sランクのモンスターさえ狩れる力をつけたら1人でやる方が経験値効率がいいんだ」

「経験値効率……」

「デルガやアグリードに手伝って貰うと物凄い勢いで経験値が貰えるけど本来貰える経験値より何割か減るのは分かるよね?」

「それは……当然です」

「無くなる経験値が勿体無いって思っちゃってな?レベル上げはデルガから卒業しようと思って」

「卒業?!」

背後にガーーン!の文字が浮かび上がるほどデルガはショックを隠せずにいる。
ヨタヨタと後ろに数歩下がる。

「だがな?!だがな!!!レベル上げを意外の模擬戦闘はデルガにまだまだ頼りきりだから来月でも俺の相手をつきっきりしてくれないかな?!」

「頼りきり……!!つきっきり……!!」

雷に打たれたようにその2つの言葉にプルプルと震え反応する。
真はもう一押しでデルガの機嫌が直ると直感的に判断してある品をアイテムボックスから取り出す。

「デルガこれ!ここ最近デルガを蔑ろにしてしまったお詫びの気持ちだ!受け取ってくれ!」

華美な装飾は無いがシンプルで綺麗なイヤリングをプレゼントする。

「今回のダンジョンのボスモンスターからドロップしたアイテムだ。デルガには必要のない補助アイテムかもしれないが……」

「主様!感激です!!」

突然大きな声を出して真に感謝を言う。
呆気にとられる真を差し置いてデルガは響の隣に座る。

「ささ!!主様!響のご飯を食べましょう!!いただきます!!」

真の予想を綺麗に裏切り
物凄くうきうきした様子をでご飯を食べるデルガが食卓に存在していた。








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