ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない

鐘成

文字の大きさ
上 下
21 / 100

覚悟

しおりを挟む


「【ライトニング・ボディ】」

アスマディアが自分を含めアグリード、ゴレマスにも雷属性の身体強化を施す。

「クソじじぃの反応速度は異常だ。最低でも【ライトニング・ボディ】の二重掛けは必須」

もう一度全員に雷属性の身体強化をする。

「言葉は不要だ。全力の援護!」

身体強化の二重掛けによりその移動速度はデルガの素の状態をも上回った。

「【キャッスルシールド】」

「【ライトニング・パワー】」

腕にだけ速度と力を集中して強化する魔法を掛けてヴォルフレーの防御魔法である【キャッスルシールド】を殴りつける。

ピシッ

たった一度のパンチでヴォルフレーの最強の防御魔法にヒビが入った。

「【フレイム・レーザー】」

「っ?!」

咄嗟に顔を左に逸らすと火属性のレーザーが右の頬を掠める。
アスマディアがその場から距離を取るとゴレマスの武器が微かに出来たヒビに突き刺さる。
アスマディアと入れ替わるように来たゴレマスは武器を掴む。

「【アビス】!!!」

「ぬぉおぉ?!なんじゃこれは!!」

空気が抜ける音がする。
ヴォルフレーを守っていた【キャッスルシールド】が溶けるように消えてゆく。

「魔法の強制解除………」

ヴォルフレーの口がわなわなと震える。

「それだけじゃない、分析して自分も習得する事が出来る。劣化するかもしれないけどな?あとは……暫くその魔法は使えない」

「魔法阻害をする魔法……!!」

「さて俺の奥の手だ。アグリード、アスマディア?本気で行くぞ!!」

1対3の戦闘が苛烈になってゆく。




アスマディアはひたすら前に出て魔法構築の阻害、アグリードは発動した魔法の防御、ゴレマスはただただその武器を全力でヴォルフレーを斬り殺そうと振り下ろしていた。

「ぬぅ!この…!!」

「死ねぇこのクソじじぃぃぃぃ!!!!」

アスマディアが運良くその懐に入る。

(息の根を止めるのにそこまで派手な魔法は必要ない!これでお終いーーー)

短剣が首に迫る。

50㎝

40㎝

30㎝

20㎝

1㎝

「おぉぉぉぉ!!」

魔力を体から放出する。
僅かに短剣の軌道がズレる。

チッ

短剣は首に届く事なくその頬に小さく傷を付けただけに終わる。

反撃を警戒してその場から離れる。

3人は合流するとヴォルフレーの行動を一つも見逃さないとばかりに強く睨む。

「ふふ、この小僧がーー」

3人に聞こえないくらいの小さな声で呟く。

「このワシの体に傷……!」

魔力が爆発し地面をえぐった事で煙が上がる。
咄嗟に防御魔法を3人は爆風と煙凌ぐ

爆風が収まり煙も霧散する

「小僧如きが……あの方に捧げる筈の体に傷を付けおってぇえぇぇぇぇえ!!!!!」

今まで小さく背中の曲がっていた老人ではなく見た目の年齢が30にまで若返ったヴォルフレーが現れた。

「魔法に頼らず!この手で!貴様らをくびり殺してくれるわ!」

その姿が霞む
次に認識出来たのはアグリードの首を掴んだ時だった。
流れるようにアグリードを地面に叩き抑えるとほんの少し浮き上がった脚を掴みゴレマスに向けて投げつける。

「「っぐあ!」」

「【ライトニング】」

「【パラライズ】」

アグリードを投げ即座に動きにくい体勢になったヴォルフレーに斬りかかるが麻痺の魔法を掛けられてしまいその場に倒れてしまう。

「さっきは良くも!ワシを!コケにしてくれたなぁぁぁ!!!!」

「ぐっ!っ!がぁ!ごぶっ!」

動けないアスマディアを何度も踏みつけ痛め付ける。

「アスマぁ!!」

ゴレマスとアグリードがそれぞれの武器を持ちその首を落とそうと振るう。

「【インパクト】」

腕に魔力を纏い2人を軽く上回る速度で攻撃を避けて隙が出来た瞬間に無防備な背中を叩く。

ドウン!!!

纏っていた魔力が弾けて2人の体に戦いが始まって1番の衝撃が走る。

「「がぁ?!」」

(体が動かない……これはパラライズも含まれてたか!!)

「あ…が…ご、の!」

「アグ、り………どっ」

「そこそこの魔力を込めてもまだ生きてるのか?しぶといな貴様らは!フハハハハハハ!」

嘲笑が神殿中に響く

「悪魔貴族と言えど!まだまだ実践の知らない子供ではないか!!」

何度もパラライズを重ね掛けしていく。

「ふん……アスマディアと言ったか?貴様は…役に立たなかったなぁ!!」

ゴズッ!

髪を掴み神殿の床に叩きつける

ゴズッ!

何度も

ゴズッ!

何度も

ゴズッ!

何度も床にアスマディアの頭を魔力で強化した腕を使い叩きつける。

「この……死ねよクソじじぃ」

朦朧とする意識で愛用の短剣を振り上げる。

「フハハハハハハハハハハ!!!そのような死に体で何が出来るというのだ!!死に損ないのクズが!まともに命令も遂行出来ぬクズ以下の分際で!!」

魔力で強化された脚で何度も背中を蹴られて力尽きたようにアスマディアの腕が落ちる。

「フハハ!やっと!!死んだか!!」

「っ!アスマ……ディア!!」

少しずつパラライズが解け、動き始めたゴレマスとアグリードが名前を呼ぶ。

「次はお前達……だな?」

アスマディアに背を向ける。
歩き出すと愛用していた短剣に靴が当たる

(お前はここで…………)

短剣が光り輝く

「な?まだ生きてーーー?!?!」

「【エクスプロージョン】」

空間全てを覆わんばかりの光が溢れるとアスマディアと近くにいたヴォルフレーを中心に神殿を揺らすほどの爆炎の渦が上がる。

「アスマディアーーー!!!!」

「ゴレマス!よせ!巻き込まれる!」

爆炎の渦が数分間上がり続けている間に完全にパラライズが解けたゴレマスが助けようと駆け出した所をアグリードが肩を掴み宥める。

「あれの中は全力で守りながら入っても危険な領域だ。まだ待て」

「ふざけるな!!俺は助けにいくぞ!アイツクソ悪童だったといえお前以外にいた唯一の親友なんだぞ!見捨てられるか!」

(ゴレマスも大概……悪魔的ではないか)

「安心しろまだ生きてる」

「?!」

爆炎の渦の勢いが30秒後には衰え、更に1分後には完全に勢いがなくなり鎮火する。




「ぁ……」

「アスマ!!」

「待て!ヴォルフレーもまだ生きてる」

微かな呻き声を上げたアスマディアの横には息絶え絶えな様子のヴォルフレーがふらつきながら立っていた。

「ぐぅぅぅぅ!!!!」

全身の肉は焼け爛れ立っている事はおろか生きているのが奇跡だった。
しかし悪魔族の特性である異常な生命力故か小さな生の糸を掴み手繰り寄せる事が出来ていた。

「まだ……ワシは」

その姿は先程までなっていた30代の青年の姿ではなく会った時の姿である老人の姿だった。

「【グランド…マジック!!!】」

自身の魔力を無理矢理集めて魔法陣を完成させた。

「これが最後……だ」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...