上 下
3 / 100

プロローグ3

しおりを挟む


白蓮騎士ギルド新人と真は必死に逃げていた。
2人はかなりのスピードで走ったせいか息が大分乱れている。

(このま走れば10分もせずに入り口に辿り着くだろうがどうも嫌な予感がする)

念の為モンスターが出ても対応出来るよう短剣を握ろうとした時後方で爆発音が聞こえる。

「な、なんだ?!」

「芥さん達か!ここまで音が届くなんて一体どれほどの……」

「き、君急ごう!下手したらここまで余波が来かねな――」

刹那


――――――――ドン!!!!!!


一際大きな音がダンジョン内に響くと今まで聞こえていた爆発音が収まり途端に静かになった。

「決着が…着いた?」

「詩乃さん達が勝ったのか………?」

2人が少しだけ、ほんの少しだけ足を緩めた時
ダンジョンの奥から途轍もない殺気を感じた。

あまりにも濃密な殺気に足が震えて動けなくなる2人に近づく影がいた。
壊れた人形のように振り向くとそこには芥、鹿島、紅葉詩乃と思しき女性を雑に引きずっている。
がいた。

真と白蓮騎士の新人ハンターは何が起きたか理解出来なかった。
Cランクの芥や鹿島ならいざ知らず最高峰ハンターであるSランクの紅葉詩乃がぼろ雑巾の様に扱われている様に。

ふと、混乱している真達に鉄の匂いが届く。
なんなのかと、ボロボロの3人を見ると目を見開いた。
そして異常な出来事を理解すると吐き気が襲って来る。

「はっ…はっ。うっぷ!おうぇぇぇぇぇええぇぇえぇぇ!!」

低級ダンジョンではあり得ない光景に朝食で胃の中に収めた物を逆流させた。
芥、鹿島、紅葉詩乃のいずれの3人の足が歩く事は疎か立つ事すら不可能な程にグチャグチャに潰されてしまっていた。
肉が裂け骨が見え、見えた骨さえ炭となっている。

恐怖で身がすくみその場から動けなくなる。


「………!!!」


心の底からの恐怖

今の2人の様子を表すなら蛇に睨まれた蛙に似ていた。

「あっあっ」

最早這いずる事も出来ずに震えるしか無かった。

「ぇ……」

「え?」

「に…げて。わだしはゴホッ!…い"い"…からぁ!」

必死に声を絞り2人に逃げる事を促す紅葉詩乃

「なんとか…!するーーー」

2人を逃す為に騎士に時間稼ぎの抵抗として騎士のアキレス腱に噛みつくが

ガッ!ゴッ!バキィ!

足のまだ掴める部分を掴んで地面に叩きつけ、顔面への拳の強打、そして紅葉の手を掴み右手を赤子の手を捻るかの様に折った。

「き、ぁぁあぁぁあぁぁぁ!!!!」

追い討ちとして騎士は紅葉の血で濡れた腹に思い切り拳を撃ち込む

紅葉の悲鳴が響く事なくその意識を落とした。
ここに着く前にこの騎士と一戦交え蓄積されたダメージも相まって、紅葉詩乃は限界を超えて気絶したのだった。

(逃げなきゃ!でも……助けないと!だけど勝てるわけがない!!)

生きたい考えと助けなきゃという考えで頭の中がゴチャゴチャになっている時に白蓮騎士ギルドの新人ハンターが声を上げた。

「な、なぁ!お前の狙いはなんなんだ?狙いはハンターなのか?もしハンターならこいつをどうとでもして良いから俺を助けてくれよ!」

そう言いながら真を突然殴ると体勢の崩れた所を狙い騎士の元へ投げ飛ばした。


「は?」

「こ、これでいいだろ?!狙いはハンターなんだろ!だから……俺は助けてくれよ!!」

そのまま混乱して動けないでいる真を置いて逃げる。

(おい、まてよ…ふざけるなよ?!!!!なんで自分だけ助かろうとしてんだよ!!俺だって死にたくないんだよ!ふざけんなよ!!)

逃げたハンターを目で追うと突然体が寸断され転がる度重なる異常光景に目を白黒させるがハンターがもう生きていない事はだけは理解出来た。


ガチャガチャ…ガゴッ

何かを弄る音が聞こえ真は振り返る。
騎士が自分の顎を弄ったあと

『お前は…この、群れるだけ…しか能がない。ゴミの仲間…なのか』

決して声が大きいわけでは無かったがその声が異様に響いた。

『この…小娘は愚かにも我…に襲いかかって来た』

喋るのに慣れて来たのか騎士が少しずつ饒舌になっていく。

『我はゴミがここに出現したと聞き…駆けつけたただの騎士にすぎぬ。ゴミと騎士の判別もつかぬのか貴様らは』

騎士の殺気が更に爆発した。

「芥さん達にそんな事をしておいて何を言ってんだよ!!」

『言ったであろう。我はただゴミを掃除しに来ただけに過ぎぬ。ここに飛んで来てゴミ掃除を始めた時に我を殺そうとして来たのだ、殺そうとしたのなら殺されても文句は言えまい?』

「なら、何故その人を生かしてここに連れて来た?殺せば良かっただろう」

震えそうになる体を気合で押さえ付けながら聞く。

『それは小娘と似た匂いが離れていくのを感じたのでな?このような状態を見せつけ反応を楽しむ為に来たのだが……期待出来ぬゴミしかいない。心底不愉快だ』

騎士は紅葉の頭を掴み見せ付けるよう持ち上げる。

(やばい、どうする?!仕掛けるか?まだレベル1の俺がか?!無理だろ……でもっ!)

『生きていると我に不都合が起こり得るやも知らんからな?お前らを始末しよう。手始めにコイツだ!』

(考えている暇なんて…!!!)

頭を潰す為に力を入れようとした時、真は意を決して短剣を握り締めて騎士に切りかかかった。

「うわぁああぁぁあぁ!!!」

騎士はため息を吐くような仕草をする

『愚か』

騎士が紅葉の頭を掴んでいない右手で無造作に振り払い襲いかかって来た真を壁に叩き付ける。

「ゴフッッ!!」


(死ぬ…誰か、助け)

高く上がる拳に真が死を覚悟して目を瞑る





(…………アレ?)


一向に痛みが襲って来ない。
もしかしてもう既に死んでいるのかと考え目を開く。

ドサッ

目を開くと紅葉の頭を掴んでいた腕が根本から切り落とされていた。

「?!?!」

あまりの衝撃に真は固まる

その腕を切った人を見る
全身鎧の騎士の出で立ちで、ただの鎧ではなくまるで全身タイツように体に完全にフィットしている感じだった。
その手には刀身だけで180近くある剣が握られており、
いつ腕を斬り落としたのかは真のレベルでは認識出来なかったが、それでも異常で音が聞こえなかった。

「え……」

「初めてだなこのスキルで呼び出されたのは」

「姉上、私は過去に何度も」

「自慢か?」

「そこそこ」

「は?」

1人かと思ったら直ぐ側にも似たような見た目の騎士がいた。
そして場の空気を無視して気軽に子供のような喧嘩を始める。

『……だ』

「「あ?」」

『何者だ!貴様らぁぁ!!!』

元々いた方の騎士は激昂し、2人の騎士に問いかける。

「何者だと?そんな事とうの昔に決まっている」

「そこの少年のスキル願いと契約した悪魔だ」

『悪魔だと?何を言って……?!』

そこまで口にして気付く
自身が記憶している中で1番手を出すなと言われていた存在の事を。

『まさか、まさかお前ら』

「そ、姉弟していの悪魔だ」

「粗暴な姉が怖いです」

「お前マジで後で覚えとけよ?……とまぁ、そういう事だ」

(どういう事?)

真は状況が飲み込めなかった。

「私らに勝てると思ってんのかよ」

「この人に手を出すというのなら」

弟の方が真の前に庇うように立つ

「「殺す」」

突然やって来た自称悪魔の騎士2人は元々いた騎士を上回る殺気を放つ。

真は展開の速さに頭がついて行かず
もはや頭の中が真っ白であった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

闇属性は変態だった?〜転移した世界でのほほんと生きたい〜

伊藤ほほほ
ファンタジー
女神によって異世界へと送られた主人公は、世界を統一するという不可能に近い願いを押し付けられる。 分からないことばかりの新世界で、人々の温かさに触れながら、ゆっくりと成長していく。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる! 孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。 授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。 どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。 途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた! ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕! ※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

処理中です...