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09.部下の妹
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1941年12月24日12:00 大日本帝国 東京市 総理官邸
総理官邸の2階の壁をほとんど撤去して、余計は飾りや調度品等はすべて売却、民間企業の会社のオフィスの事務机を並べて、一番奥に自分の席とその脇に木村三佐(少尉から三佐に昇格した。)と女性の秘書官10名の席がある。俺がいるフロアには内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通相、産業省、警察省、郵政省、陸軍省、海軍省の16省(誠司が内閣総理大臣に就任後、省庁の統廃合を行いこの体制となった)大臣とその下の事務官各30人の合計約500人程が一つのフロアにまとめられ、俺からの指示をすぐに伝えることができる体制となっている。もちろん各省庁それぞれ割り振られた庁舎があり、そこでは副大臣と事務次官が指揮を取っているが、縦割り行政を廃し、できるだけフラットに省庁間の協力ができるように、このような配置となった。この他に外局に国家安全情報局(誠司が新設した主に国外の諜報活動を行う機関)、特別高等警察を解体して再編した国家安全捜査局(誠司が新設した主にテロやクーデター等の組織犯罪や政治家や官僚、陸海軍、皇族、華族の犯罪を専門とする捜査機関で、天皇,皇后,皇太子,内閣総理大臣,裁判官以外のすべての国民に対して、裁判所の捜査令状なしで捜査をする権限を持つ超法規的機関)等の新しい政府機関もあるが、業務内容の秘匿性が高いためこのフロアにはいない。
陸軍省と海軍省の席は、あえて陸軍に所属する俺が陸軍を贔屓していないというパフォーマンスのため、一番俺の席から遠い席に配置している。しかし、海軍省の職員はみなスーツを着ているのに対し、陸軍は俺が動きやすさを優先して皇族や外国の大使と会う時以外は常に陸軍で新たに採用された迷彩服(陸上自衛隊の迷彩服とほとんど同じデザイン)を着ているため、俺に習って陸軍省の職員は全員が迷彩服を着用している。そのため、陸軍省のみフロアの中でも若干浮いているが、彼らは全員俺のシンパであり、俺と同じ迷彩服を着て仕事をしていることに誇りを持っているようだ。
現在の大日本帝国の中枢を1箇所に集めたことで、ここがテロの対象になって壊滅すると、政府機能が停止してしまうという懸念はあった。しかし、そのようなリスクを負ってでも、各省庁一丸となって効率的に国力を上げることを優先した。そうしなければアメリカに追いつくために何十年もかかってしまう。その分、総理官邸周辺のセキュリティは世界最高レベルに厳重にしている。出入りの搬入業者でさえ全てゲート前で止められ、官邸内の厨房から売店、清掃、建物のメンテナンスも含めて全て陸軍軍人で運営している。少なくともチートスキルのおかげで陸軍内部から裏切られる心配がないから官邸内は俺にとって世界で最も安全な場所の1つだ。
総理官邸の受付の女性が俺の前を会釈して横切ると、俺の隣りにある木村三佐の席の前で立ち止まった。
「失礼します。木村三佐、妹様がお届けものがるということで受付に来ております。」
木村三佐は何かの書類を作成していたが、手を止めて受付の女性に向き直る。
「ありがとう。すぐに行くから受付で待たせておいてくれ。」
「はい。承知しました。」
木村三佐の家族か、彼には普段から世話になっているから俺からも挨拶しておくかな。
「木村君にはいつも世話になっているからな、せっかくご家族が来ているなら挨拶がしたい。応接室で待ってもらってくれ」
「閣下、お忙しいのに気を使わないでください」
「木村君には本当に世話になってるからな。上司として挨拶くらいさせてくれないか?」
「恐縮です!閣下のお言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます、急いで妹を応接室に連れてきます」
そういうと木村三佐は駆け足で1階の受付に向かって行った。5分ほど自席で待っていると、木村三佐が息を切らせて戻ってきたので、一緒に1階の応接室に向かった。
応接室に入ると高等女学校の制服を着て、脱いだ外套を手に持った小柄な少女が応接セットのソファー前に立っていた。
挨拶をしようと思い彼女に近づいて彼女の顔を見た瞬間、僕の目は彼女の黒目が大きくてくりっとした瞳に吸い寄せられた。心臓の鼓動が早くなり、自分が刹那にして目の前の少女の虜になったことを自覚した。ただ美少女だからというだけではなく、俺の心のパズルにぴったりとハマる最後の1ピース、園田誠司を構成するほとんどすべての細胞が彼女を必要としていることを思い出したような感覚にさせるような魅力的な少女だった。
「楓、閣下にご挨拶しなさい。」
「はじめまして。園田閣下。木村の妹の楓と申します。いつも兄が大変お世話になっております」
楓さんのウグイスの囀りのような澄んだ美しい声を聞いた俺は、衝撃のあまり一瞬固まってしてしまった。
「楓は今は第一高等女学校の3年ですが、卒業後は陸軍省に任官予定ですので、できの悪い妹ですが、よろしくお願いいたします」
……………。
「あの、閣下?」
木村三佐の声でなんとかこちらの世界に戻ってくることができた。
「あっ、俺の方こそいつも木村君には世話になってまして…」
「いえ、兄はいつも閣下のお話をされるときはまるで自分のことのように嬉しそうに妹の私に自慢してくるんですよ。尊敬している閣下のお側で働かせていただく以上に兄にとって幸せなことはないと思います。私も兄の話を聞いて卒業後は陸軍への任官を決めました」
なんと!春から楓さんと同じ職場で働けるのか!いやしかし、部下には手を出さないと決めた手前…。いやいや、手を出すとか出さないとか、俺はたった今会ったばかりの初対面の女学生に対して何を考えているのか。
「こらっ、やめなさい。閣下の前でお恥ずかしいだろ」
木村三佐が顔を赤らめて照れているが、今はそんなことはどうでも良かった。
「あの、楓さん、昼食がまだったら三人でどうかな?」
「是非ご一緒したいのですが、申し訳ございません。兄にお弁当を持ってきたのですが、これから父にも弁当を届けなければいけなくて…。」
本当に申し訳無さそうな顔で謝っている楓さんの姿を見ていたら、俺の方が申し訳ない気持ちになってきた。
「それなら仕方ないですね。急いでいるところ引き止めてすみません。それなら改めて近々夕食にお誘いしてもよろしいですか?」
俺が夕食を提案すると楓さんは花が咲いたような笑顔になり僕の誘いを快諾してくれた。
楓さんを総理官邸の出入り口の前まで見送った俺は、木村三佐と一緒にオフィスに戻った。
「木村君、ちょっといいかな」
「はいっ!」
木村三佐を自席に呼んで、気になっていることを尋ねる。
「楓さんは許嫁とかお付き合いしている男性はいるのかな?」
「いえ、そのような話は聞いたことがありません」
良かった!実に良かった!女学校3年と言えば18歳、俺より3歳下だから、年齢的にも釣り合うのではないだろうか!
「そうか、さっき話していた夕飯の件だだけど、できるだけ早くセッティングして欲しい。他のどんな予定があっても空けさせるから、楓さんの都合を最優先で頼む」
「大変恐縮ですが閣下、もしかして妹をお気に入りいただけたのでしょうか」
うわっ、この手のことには鈍感そうな木村三佐にもバレるほど俺はデレデレしてしまっていたのだろうか。もしそうなら楓さんにもバレてしまった可能性がある。そう考えたら急に恥ずかしくなった。
「えっと、まぁ・・・。よく分かったな。」
「もう閣下とは2年間も毎日家族より長い時間を一緒にいますからね、今までどんなに美しい女性と会っても全く興味を示されないので、そういったことに興味がないのかと思っておりましたが、まさか私の妹を気にっていただけるとは光栄の極みです。さっそく帰ったら両親にも話して段取りをしますのすので、今日は5時に上がれるように業務を調整します!」
木村三佐がいつになく嬉しそうな笑顔で席に戻って仕事を再開した。
今日が初対面だからあまあり大袈裟にはしたくなかったが、この時代って親とか兄とかが決めた相手と結婚するっていうのが普通みたいだし、もしかしてすぐ結婚の話になってしまうのか?そうなると俺としては願ってもないことだけど、立場上もし他に好きな人がいても断れない楓さんが可哀想だな。そこは楓さんの気持ちを尊重したいから、二人きりで話す機会を作って絶対に聞いてみよう。
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陸軍省と海軍省の席は、あえて陸軍に所属する俺が陸軍を贔屓していないというパフォーマンスのため、一番俺の席から遠い席に配置している。しかし、海軍省の職員はみなスーツを着ているのに対し、陸軍は俺が動きやすさを優先して皇族や外国の大使と会う時以外は常に陸軍で新たに採用された迷彩服(陸上自衛隊の迷彩服とほとんど同じデザイン)を着ているため、俺に習って陸軍省の職員は全員が迷彩服を着用している。そのため、陸軍省のみフロアの中でも若干浮いているが、彼らは全員俺のシンパであり、俺と同じ迷彩服を着て仕事をしていることに誇りを持っているようだ。
現在の大日本帝国の中枢を1箇所に集めたことで、ここがテロの対象になって壊滅すると、政府機能が停止してしまうという懸念はあった。しかし、そのようなリスクを負ってでも、各省庁一丸となって効率的に国力を上げることを優先した。そうしなければアメリカに追いつくために何十年もかかってしまう。その分、総理官邸周辺のセキュリティは世界最高レベルに厳重にしている。出入りの搬入業者でさえ全てゲート前で止められ、官邸内の厨房から売店、清掃、建物のメンテナンスも含めて全て陸軍軍人で運営している。少なくともチートスキルのおかげで陸軍内部から裏切られる心配がないから官邸内は俺にとって世界で最も安全な場所の1つだ。
総理官邸の受付の女性が俺の前を会釈して横切ると、俺の隣りにある木村三佐の席の前で立ち止まった。
「失礼します。木村三佐、妹様がお届けものがるということで受付に来ております。」
木村三佐は何かの書類を作成していたが、手を止めて受付の女性に向き直る。
「ありがとう。すぐに行くから受付で待たせておいてくれ。」
「はい。承知しました。」
木村三佐の家族か、彼には普段から世話になっているから俺からも挨拶しておくかな。
「木村君にはいつも世話になっているからな、せっかくご家族が来ているなら挨拶がしたい。応接室で待ってもらってくれ」
「閣下、お忙しいのに気を使わないでください」
「木村君には本当に世話になってるからな。上司として挨拶くらいさせてくれないか?」
「恐縮です!閣下のお言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます、急いで妹を応接室に連れてきます」
そういうと木村三佐は駆け足で1階の受付に向かって行った。5分ほど自席で待っていると、木村三佐が息を切らせて戻ってきたので、一緒に1階の応接室に向かった。
応接室に入ると高等女学校の制服を着て、脱いだ外套を手に持った小柄な少女が応接セットのソファー前に立っていた。
挨拶をしようと思い彼女に近づいて彼女の顔を見た瞬間、僕の目は彼女の黒目が大きくてくりっとした瞳に吸い寄せられた。心臓の鼓動が早くなり、自分が刹那にして目の前の少女の虜になったことを自覚した。ただ美少女だからというだけではなく、俺の心のパズルにぴったりとハマる最後の1ピース、園田誠司を構成するほとんどすべての細胞が彼女を必要としていることを思い出したような感覚にさせるような魅力的な少女だった。
「楓、閣下にご挨拶しなさい。」
「はじめまして。園田閣下。木村の妹の楓と申します。いつも兄が大変お世話になっております」
楓さんのウグイスの囀りのような澄んだ美しい声を聞いた俺は、衝撃のあまり一瞬固まってしてしまった。
「楓は今は第一高等女学校の3年ですが、卒業後は陸軍省に任官予定ですので、できの悪い妹ですが、よろしくお願いいたします」
……………。
「あの、閣下?」
木村三佐の声でなんとかこちらの世界に戻ってくることができた。
「あっ、俺の方こそいつも木村君には世話になってまして…」
「いえ、兄はいつも閣下のお話をされるときはまるで自分のことのように嬉しそうに妹の私に自慢してくるんですよ。尊敬している閣下のお側で働かせていただく以上に兄にとって幸せなことはないと思います。私も兄の話を聞いて卒業後は陸軍への任官を決めました」
なんと!春から楓さんと同じ職場で働けるのか!いやしかし、部下には手を出さないと決めた手前…。いやいや、手を出すとか出さないとか、俺はたった今会ったばかりの初対面の女学生に対して何を考えているのか。
「こらっ、やめなさい。閣下の前でお恥ずかしいだろ」
木村三佐が顔を赤らめて照れているが、今はそんなことはどうでも良かった。
「あの、楓さん、昼食がまだったら三人でどうかな?」
「是非ご一緒したいのですが、申し訳ございません。兄にお弁当を持ってきたのですが、これから父にも弁当を届けなければいけなくて…。」
本当に申し訳無さそうな顔で謝っている楓さんの姿を見ていたら、俺の方が申し訳ない気持ちになってきた。
「それなら仕方ないですね。急いでいるところ引き止めてすみません。それなら改めて近々夕食にお誘いしてもよろしいですか?」
俺が夕食を提案すると楓さんは花が咲いたような笑顔になり僕の誘いを快諾してくれた。
楓さんを総理官邸の出入り口の前まで見送った俺は、木村三佐と一緒にオフィスに戻った。
「木村君、ちょっといいかな」
「はいっ!」
木村三佐を自席に呼んで、気になっていることを尋ねる。
「楓さんは許嫁とかお付き合いしている男性はいるのかな?」
「いえ、そのような話は聞いたことがありません」
良かった!実に良かった!女学校3年と言えば18歳、俺より3歳下だから、年齢的にも釣り合うのではないだろうか!
「そうか、さっき話していた夕飯の件だだけど、できるだけ早くセッティングして欲しい。他のどんな予定があっても空けさせるから、楓さんの都合を最優先で頼む」
「大変恐縮ですが閣下、もしかして妹をお気に入りいただけたのでしょうか」
うわっ、この手のことには鈍感そうな木村三佐にもバレるほど俺はデレデレしてしまっていたのだろうか。もしそうなら楓さんにもバレてしまった可能性がある。そう考えたら急に恥ずかしくなった。
「えっと、まぁ・・・。よく分かったな。」
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木村三佐がいつになく嬉しそうな笑顔で席に戻って仕事を再開した。
今日が初対面だからあまあり大袈裟にはしたくなかったが、この時代って親とか兄とかが決めた相手と結婚するっていうのが普通みたいだし、もしかしてすぐ結婚の話になってしまうのか?そうなると俺としては願ってもないことだけど、立場上もし他に好きな人がいても断れない楓さんが可哀想だな。そこは楓さんの気持ちを尊重したいから、二人きりで話す機会を作って絶対に聞いてみよう。
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