冒険者よ永遠に

星咲洋政

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2章

魔道士コロン

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 私は昔聞いたことがある。それはスレイミーナ王国が内線をしていた時代だ。国王ガダルカナル・ヘンダーソンと、その弟のイースタン・ヘンダーソンが対立したんだ。父であるガダルカナルの元、常に最前線に立ち続けた王女の話を聞いたことがある。聖なる光で鉄の軍艦を貫き、炎を纏った槍を振るう王女。目の前で繰り広げられる猛攻はまさにその様を再現しているかのようである。私は全く歯が立たない。部屋の端まで追い詰められてしまった。追い詰めきった余裕からかコロンは私から一瞬目を離した。私はそこに合わせた。一発の銀の弾丸で脳天に穴を空けるために。しかし発砲するや否や、銀の弾丸は深緑の灰になっていった。酒場での光景を私は思い出した。コロンは哀れみの表情で私を見つめる。

「銀の弾丸が人間に向けられて発砲された場合、弾丸はその姿形を保てなくなるようにしてあります。悪用への対策です。ただ、これは私の魔力が届く範囲までしか効力を出せませんけどもね。せいぜい都市ヴァロン全域程度です。」

コロンの回りに光る玉が浮遊し始めた。杖の先は黄色く光る。光球は一つまた一つと増えていく。私はその隙に壁際から抜け出し部屋の中央まで駆け抜ける。

「力を持つものの責任なんです。このような凶器を造り出した者の責任なんです。しかし迷宮の内部にまではこの力を及ばせることはしなかった。迷宮は法が及ばない土地。時には銀の弾丸で自衛しなければならない瞬間も出てくるでしょう。しかしそれは甘かった。」

コロンの周りに漂う光球から光線が放たれる。鉄の軍艦を一撃で沈没させたという閃光魔道。手に握る剣を貫き溶かしてしまった。しかしまだ私には対抗手段が残っている。私が持ちうる攻撃手段は銀の弾丸による射撃、剣による斬撃。

「パァン!!」

そして通常の弾丸による鉛の一撃だ。銀の弾丸を主力にする冒険者にとって通常の射撃は忘れ去られやすい存在だ。コロンにも見事策が嵌まったようだ。コロンの肩からはじわじわと血が溢れてくる。

「ここまで登り詰めるだけのことはある……魔道杖にはまだパージの可能性が残っています。」

コロンの持つ杖の先から二つのパーツが外れて落ちていった。残る一つのパーツはより輝きが強くなる。銀の弾丸と同じ色の輝きだ。

「銀の弾丸はこの腐敗魔道を応用させて作り出した代物です。傷口を腐敗させて治癒を封じるように作りました。さてあなたは、制御を失ったこの腐敗魔道に勝てるでしょうか?銀の弾丸の能力そのものであるこの魔道に。」

杖からは深い緑色の霧が生成される。地面に生える雑草は一瞬のうちに朽ちて崩れ去っていく。

「魔族はそれぞれ一つの能力を生まれながらにして持っています。それが魔法です。魔道はそれを模倣したもの。魔王エカーチャよ、しばらくその力お借りしますよ。魔道杖のパージは限界まで魔道の能力を高めることができる、オリジナルに近い能力にまでね。」

「パァアアン!!!!」

背後だ。私の背後から銃声が聞こえた。つまり大広間の入り口の方角からだ。そして銃声の発生源から声が聞こえる。

「この時を待っていたよ、やはりな。この弾丸が腐敗魔道というもので制御されているというなら、制御を失った腐敗魔道ではお前の対策も機能しないようだな。」

コロンは脳天に銀の弾丸による銃撃を受けて倒れた。暗夜の樹海の大広間、その草原の絨毯を朱に染めて。
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