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216.断罪(27)

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「………不審な点はそれだけではない。父が倒れてから崩御するまでの間、母や私、それにヴァレンツィ公爵夫人が見舞っても、意識は混濁していて、顔すらもまともに判別がつかない状態だった。それなのにそなたやそなたに肩入れをする貴族達とは話が出来る。しかもそなたたちが父と面会する時には私達の同席は決まって断わられたと思うが…………私の記憶違いか?」

淡々とした語り口とは裏腹に、穏やかなフェルディナンドの顔には怒りが滲んでいた。

「…………そ………それに関しては、………その、随分と昔の話ですので…………」

何とか声を絞り出すベッリーニ侯爵だったが、そう答えながらもフェルディナンドの方を見ようともしていなかった。

「つい数年前の話も、そなたにとっては昔の話なのだな。…………つまり、そなたはその頃の事をよく覚えていないと…………そう言いたいのか?」

フェルディナンドは呆れたように腕を組んだ。
その足元で、ベッリーニ侯爵が激しく頷いている。

「…………だそうだぞ、ベルナルド」

小さく鼻を鳴らしたフェルディナンドは、隣に佇むベルナルドにちらりと視線を送った。
するとベルナルドは軽く頷くと、また一歩、ベッリーニ侯爵へと近づいた。

「………この期に及んで、まだ言い逃れが出来ると思っているのか」
「言い逃れ?言い逃れなどしようとは思っていない!私は間違っていない!」

尋問者がベルナルドに変わった途端にベッリーニ侯爵は勢いよく怒鳴る。
完全にベルナルドを侮っているからだろう。
だが、ベルナルドはそれを気にする風もなく、ただ受け流した。

「………だからお前は、『お飾りの宰相』なんだよ」

静かな口調でそう言い放ったベルナルドは、軽く手を上げた。
すると控えていた衛兵が恭しく差し出してきた書類を手に取る。
そして、その書類の束を乱暴にベッリーニ侯爵の足元へと放り投げた。

「…………一体、何の真似だ?」

ベッリーニ侯爵は眉を顰めたが、ベルナルドのほうはにやりと笑みを口元に浮かべてみせただけだった。

「…………?」

目の前に放り投げられた書類の束を、這いつくばったままの姿勢で、ベッリーニ侯爵が覗き込む。

「…………!」

それから少しの間を置いてベッリーニ侯爵があからさまに息を呑んだ。
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