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205.断罪(16)

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またも貴族達がざわざわと騒いでいるのが嫌でも耳に入る。
アルフォンシーナはぐっと唇を噛み締めると、顔を上げた。

「………陛下、発言をお許し下さい」

微かに震える声で申し出ると、フェルディナンドは無言で頷いた。
ベルナルドが心配そうな視線を投げかけてきたが、アルフォンシーナは小さく首を振り、顔を上げた。

「それはあくまでもタルディッリ男爵令息の言い分です。わたくしにとっての彼は、母の友人の子であり、幼馴染という事以外には何の感情もありません。わたくしが既婚者だから体裁を気にしているとか、醜聞を恐れているからではなく、初めから『男性』として見ていないのです」

ブルーノ自身にはもう何度も伝えたことを、改めて口にすると、貴族達は再びざわついた。
気持ちがないということをアルフォンシーナが明言したことで、ベッリーニ侯爵の証言は嘘であり、ブルーノの発言も妄言だということになり、面白くなってきたとでも言っているのだろう。

しかし肝心のブルーノには、相変わらずアルフォンシーナの言葉は響いていないらしかった。

「アリー、昔はもっと素直な女のコだったのに………」

残念だ、とでもいうように、ブルーノは溜息をつく。

(………溜息をつきたいのは、わたくしのほうよ…………)

全く話しの通じないブルーノにげんなりしながら、アルフォンシーナは彼に冷たい視線を向けた。

「………あなたは幾つになっても成長していないけれど、わたくしたちはもう大人なの。いい加減、下らない妄想はやめて目を覚まして頂戴?…………いい?例えわたくしがベルナルド様と離婚したとしても、わたくしがあなたと結婚することは絶対にないわ」

国王の前でこのような発言をするのは不適切だし、公の場で声を荒げる行為は、淑女としてあるまじき行為だと分かっていたが、アルフォンシーナは敢えて皆に聞こえるような声で、ブルーノに向かってそう宣言した。

「…………え……………?」

すると、初めてブルーノの表情が変わった。
一瞬その場で固まり、それから大きく目を見開いて、まるで亡霊でも見たかのような表情でアルフォンシーナを見た。

「あ………、アリー。い、今のは、嘘、だよ………ね………?」

戦慄く唇から微かに漏れ出た言葉は、ようやく拾えるほどの小さな声で、ブルーノが問いかけてきた。
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