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201.断罪(12)
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「気を失った後、再び目を覚ますとわたくしは王都の外れにある娼館の一室に監禁されておりました」
アルフォンシーナはそこで一旦言葉を切った。というのも、ブルーノに襲われかけた事を自ら告白することが躊躇われたからだ。
俯いて、何と言おうかと思慮していると、ベルナルドがアルフォンシーナの隣へと歩み寄ってきた。
「………言いたくなければ、言わなくていい。全てを詳らかにする必要はない」
そのままそっと顔を近づけてきたかと思うと、アルフォンシーナにだけ聞こえる程の小さな声で囁いた。
ベルナルドはアルフォンシーナの様子から、話すのを躊躇ったということに気がついたのだろう。
(………たったあれだけの間を置いただけだというのに、どうしてベルナルド様は気がついたのかしら………)
ベルナルドの洞察力の鋭さに、内心驚きつつも、彼の気遣いに、深く感謝した。
「………その後、タルディッリ男爵令息と少し話をしましたが、彼は『ある御方』という人物に呼ばれて部屋を出て行きました。………わたくしはその隙をついて逃げ出したのですが、廊下で話し声が聞こえて、慌てて空き部屋のベランダに身を隠しました。………そこに現れたのは、そちらにいらっしゃるベッリーニ侯爵でした」
はっきりとそう宣言すると、アルフォンシーナは曇りのないサファイア色の双眸でベッリーニ侯爵を見据えた。
「あ……………」
ベッリーニ侯爵は明らかに狼狽していて、上手く言葉が出てこないようだった。
思い出すのも不快だったが、ベッリーニ侯爵に言われた悍ましい話についても証言したほうが良いのかと考え、もう一度口を開こうとした、まさにその時。
アルフォンシーナの手に、再び大きく温かい手が触れた。
そして、アルフォンシーナを庇うように、ベルナルドが彼女の代わりに口を開いた。
「この後、何とか妻を救出することができましたが、もし何か危害を加えられていたら………と思うと、肝が冷えます」
結果的にはアルフォンシーナは無事だったということを強調するように、ベルナルドはアルフォンシーナの肩を抱き寄せた。
「…………!」
不仲説が幾度となく囁かれていたシルヴェストリ侯爵夫妻の仲睦まじい様子に、ベッリーニ侯爵親子やブルーノは悔しそうな、けれど怒り満ちた表情で二人を睨み付けていた。
アルフォンシーナはそこで一旦言葉を切った。というのも、ブルーノに襲われかけた事を自ら告白することが躊躇われたからだ。
俯いて、何と言おうかと思慮していると、ベルナルドがアルフォンシーナの隣へと歩み寄ってきた。
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そのままそっと顔を近づけてきたかと思うと、アルフォンシーナにだけ聞こえる程の小さな声で囁いた。
ベルナルドはアルフォンシーナの様子から、話すのを躊躇ったということに気がついたのだろう。
(………たったあれだけの間を置いただけだというのに、どうしてベルナルド様は気がついたのかしら………)
ベルナルドの洞察力の鋭さに、内心驚きつつも、彼の気遣いに、深く感謝した。
「………その後、タルディッリ男爵令息と少し話をしましたが、彼は『ある御方』という人物に呼ばれて部屋を出て行きました。………わたくしはその隙をついて逃げ出したのですが、廊下で話し声が聞こえて、慌てて空き部屋のベランダに身を隠しました。………そこに現れたのは、そちらにいらっしゃるベッリーニ侯爵でした」
はっきりとそう宣言すると、アルフォンシーナは曇りのないサファイア色の双眸でベッリーニ侯爵を見据えた。
「あ……………」
ベッリーニ侯爵は明らかに狼狽していて、上手く言葉が出てこないようだった。
思い出すのも不快だったが、ベッリーニ侯爵に言われた悍ましい話についても証言したほうが良いのかと考え、もう一度口を開こうとした、まさにその時。
アルフォンシーナの手に、再び大きく温かい手が触れた。
そして、アルフォンシーナを庇うように、ベルナルドが彼女の代わりに口を開いた。
「この後、何とか妻を救出することができましたが、もし何か危害を加えられていたら………と思うと、肝が冷えます」
結果的にはアルフォンシーナは無事だったということを強調するように、ベルナルドはアルフォンシーナの肩を抱き寄せた。
「…………!」
不仲説が幾度となく囁かれていたシルヴェストリ侯爵夫妻の仲睦まじい様子に、ベッリーニ侯爵親子やブルーノは悔しそうな、けれど怒り満ちた表情で二人を睨み付けていた。
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