上 下
199 / 220

198.断罪(9)

しおりを挟む
「離婚?」

 その言葉にベルナルドが反応すると、レベッカは激しく頷いた。

「そうよ!そもそもベルナルド様の妻に相応しいのは私のほうだったのに、望まぬ結婚を押し付けられてお可哀想だったから………。しかも、その女に想いを寄せている幼馴染がいるって言うじゃない?それなら、二人が離婚して、ベルナルド様は私と、その女は幼馴染とくっつけば皆が幸せになれると思ったの!」

 それまでの泣き顔から真逆の、誇らしげな表情を浮かべると、まるで自分が素晴らしい手助けでもしたかのような口ぶりで、レベッカは熱弁を振るい始めた。
 ーーー重大な失言をしたことに気が付かない程に。

「………ほう?」

 決して大きくはない、けれども末恐ろしい程の低い声が響いた。

「それは、陛下が王命で下した結婚が間違いだと………、アルフォンシーナを妻に選んだ陛下の目が節穴だと………、そう言っているのか?」
「………………!」

 ベルナルドに『重大な失言』を指摘された瞬間、レベッカは大きく口を開いたまま、青褪めた。
 それと同時に、父親であるベッリーニ侯爵も娘と全く同じ顔をしているのが目に入る。
 レベッカの発言はベルナルドの指摘の通り、国王フェルディナンドの命令による結婚を否定するものに違いなかったからだ。

「へ、陛下…………っ!違うのです!これは…………っ」

 事の重大さに気がついたレベッカは、慌てて弁明をしようとした。
 その姿は、少し前の父親と同じように見えた。
 しかし、彼女を玉座から見下ろすフェルディナンドの視線はとてつもなく冷たかった。

「レベッカ、と言ったか?………一体何が違うのか、説明してみよ」

 フェルディナンドとは抑揚のない声で命じた。
 その声を向けられたレベッカは、「ひいっ」と小さく悲鳴をあげ、縮み上がった。

「レベッカ!」

 ベッリーニ侯爵が、慌てて娘を叱咤する。
 しかし名を呼ばれたレベッカはというと、どうしていいのかわからずに、おろおろとしな柄あたりを見回した。
おそらくは、自分がどう立ち振る舞うべきなのかすらも分からない程に、狼狽えているということは、理解できた。

「説明しろと言ったのが、聞こえなかったのか?」

追い打ちでもかけるかのように、フェルディナンドが圧をかけると、レベッカはへなへなと、その場に座り込んでしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

処理中です...