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181.ベルナルドの威圧

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「………たとえ事実がそうだとしても、それは我がシルヴェストリ侯爵家とタルディッリ男爵家の問題であって、部外者であるお前には全く関係のないことだろう」

 溜息とともに、再びベルナルドが呟いた。
 あまりにも正論すぎるベルナルドの言葉に、ベッリーニ侯爵はぐ、と悔しそうに唇を引き結んだ。
 そして必死に、何か言い返してやろうと思案している様子だった。

「どんな言い訳を探しても無駄だぞ。お前の企みも、お前がタルディッリ男爵家の嫡男を唆していた事も、全て把握済だ」

 ベッリーニ侯爵に追い打ちを掛けるように、そう吐き捨てるベルナルドを、侯爵は物凄い形相で睨み付けた。

「私が一体何を企んでいるというのだ!」

 突然、人が変わったかのようにベッリーニ侯爵ががなる。
 ベルナルドはまだ口で問い詰めただけで、侯爵自身には何の攻撃もしていないというのに、侯爵は脂汗を滲ませ、ぶるぶると震えていた。

「ただ父親から爵位と財産を相続しただけの能無しの放蕩者のくせに、この私に偉そうな口を利くんじゃない!」

 そのあまりの剣幕に、アルフォンシーナは驚いて、思わずベルナルドの服の裾をぎゅっと握り締めてしまった。
 ベッリーニ侯爵のすぐ隣に佇んでいるマダム・バルバラはというと、実に迷惑そうな表情を浮かべ、『自分は、全く関係ない』とでも言うかのように真っ赤な唇を引き結んでそっぽを向いていた。
 だが肝心のベルナルドはというと、ベッリーニ侯爵に凍てつくような視線を向け、威圧しているようだった。

「………お前の話を聞いていると、私に『シルヴェストリ侯爵』の地位が似合わない、とでも言っているように聞こえるな?」

 怒鳴り終えた後、体力を消耗して疲れてしまったのか、大きく肩で息をしているベッリーニ侯爵に向けて、ベルナルドは莫迦にしたように溜息とともに呟いた。
 何故かその口元が、愉しそうに吊り上がるのが、アルフォンシーナにははっきりと見えた。
 それはまるで、ベッリーニ侯爵が自分の思惑通りに動いていた事を喜んでいるかのようだった。

「そんなこと、当たり前だろう!誰がお前のような人間を認める?!娼婦か?それとも貴様を妙に気に入っている国王か?!」

 ベッリーニ侯爵は一方的にそう捲し立て、ベルナルドを睨めつけた。
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