149 / 270
148.微睡み
しおりを挟む
やけに身体が重い。
少しずつ覚醒し始めたアルフォンシーナが真っ先に感じたのは、それだった。
物理的に上から押さえ付けられているのとは異なり、まるで金縛りにでもあっているかのような、そんな感覚だった。
意識が少しずつ覚醒してきても、頭の中全体に靄がかかったように、ぼんやりとしている。
眠たいのか、気分が悪いのかも判断がつかず、アルフォンシーナは眉間に皺を寄せて、身動ぎをした。
(………そもそもわたくしは今、眠っているのかしら………?)
この状態になる以前の記憶が全く無く、アルフォンシーナは改めて思いだそうと考えてみるが、思い出せない。
「ん…………」
少し肌寒さを感じて、アルフォンシーナが小さく呻く。
本当に僅かな声だったにも関わらず、その声はやけに響いて聞こえた。
「…………?」
そこで初めて、アルフォンシーナは異変に気がついた。
少なくとも自分が今居る場所は、シルヴェストリ侯爵邸の自室やベルナルドの執務室、それにかつてアルフォンシーナが過ごしていた実家・パルヴィス伯爵邸の自室でもない。
それどころか、今まで彼女が訪れた事のある場所のどことも異なる空気感があった。
今一体、自分自身の身に何が起きているというのだろうか。
急に不安になったアルフォンシーナは目覚めようとして、重たい瞼を何とか立ち上げた。
「ん…………」
頭のなかと同じく、ぼんやりとした景色が飛び込んできた。
そして、それと同時に頭痛とも、吐き気ともとれない不快感が襲ってきた。
それに酷く喉が渇いて仕方がない。
アルフォンシーナは誰かに助けを求めるように天に向かって手を伸ばした。
「目が醒めたのかっ?!」
不意にすぐ近くから男性の声がした。
途端にアルフォンシーナは安堵したように笑みを浮かべた。
「………ベルナルド、様…………」
何の疑いもなく、アルフォンシーナは最愛の彼の名を口にした。
「……………」
だが、彼がその呼びかけに応えることはなかった。
その代わりに、微かに息を呑んだ気配がした。
「………どうして、あの男の名前なんか呼ぶんだ………?」
暫しの沈黙の後、地を這うような低い声がそう囁いた。
その瞬間、アルフォンシーナの朦朧とした意識が覚醒し、意識を失う前までの記憶が一気に蘇ってきた。
少しずつ覚醒し始めたアルフォンシーナが真っ先に感じたのは、それだった。
物理的に上から押さえ付けられているのとは異なり、まるで金縛りにでもあっているかのような、そんな感覚だった。
意識が少しずつ覚醒してきても、頭の中全体に靄がかかったように、ぼんやりとしている。
眠たいのか、気分が悪いのかも判断がつかず、アルフォンシーナは眉間に皺を寄せて、身動ぎをした。
(………そもそもわたくしは今、眠っているのかしら………?)
この状態になる以前の記憶が全く無く、アルフォンシーナは改めて思いだそうと考えてみるが、思い出せない。
「ん…………」
少し肌寒さを感じて、アルフォンシーナが小さく呻く。
本当に僅かな声だったにも関わらず、その声はやけに響いて聞こえた。
「…………?」
そこで初めて、アルフォンシーナは異変に気がついた。
少なくとも自分が今居る場所は、シルヴェストリ侯爵邸の自室やベルナルドの執務室、それにかつてアルフォンシーナが過ごしていた実家・パルヴィス伯爵邸の自室でもない。
それどころか、今まで彼女が訪れた事のある場所のどことも異なる空気感があった。
今一体、自分自身の身に何が起きているというのだろうか。
急に不安になったアルフォンシーナは目覚めようとして、重たい瞼を何とか立ち上げた。
「ん…………」
頭のなかと同じく、ぼんやりとした景色が飛び込んできた。
そして、それと同時に頭痛とも、吐き気ともとれない不快感が襲ってきた。
それに酷く喉が渇いて仕方がない。
アルフォンシーナは誰かに助けを求めるように天に向かって手を伸ばした。
「目が醒めたのかっ?!」
不意にすぐ近くから男性の声がした。
途端にアルフォンシーナは安堵したように笑みを浮かべた。
「………ベルナルド、様…………」
何の疑いもなく、アルフォンシーナは最愛の彼の名を口にした。
「……………」
だが、彼がその呼びかけに応えることはなかった。
その代わりに、微かに息を呑んだ気配がした。
「………どうして、あの男の名前なんか呼ぶんだ………?」
暫しの沈黙の後、地を這うような低い声がそう囁いた。
その瞬間、アルフォンシーナの朦朧とした意識が覚醒し、意識を失う前までの記憶が一気に蘇ってきた。
117
お気に入りに追加
1,039
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜
あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。
他サイトでも掲載中の作品です。
一応、短編予定ですが長引きそうであれば長編に変更致します。
応援よろしくお願いします(^^)
バイバイ、旦那様。【本編完結済】
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。
この作品はフィクションです。
作者独自の世界観です。ご了承ください。
7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。
申し訳ありません。大筋に変更はありません。
8/1 追加話を公開させていただきます。
リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。
調子に乗って書いてしまいました。
この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。
甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる