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148.微睡み

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やけに身体が重い。
少しずつ覚醒し始めたアルフォンシーナが真っ先に感じたのは、それだった。
物理的に上から押さえ付けられているのとは異なり、まるで金縛りにでもあっているかのような、そんな感覚だった。

意識が少しずつ覚醒してきても、頭の中全体に靄がかかったように、ぼんやりとしている。
眠たいのか、気分が悪いのかも判断がつかず、アルフォンシーナは眉間に皺を寄せて、身動ぎをした。

(………そもそもわたくしは今、眠っているのかしら………?)

この状態になる以前の記憶が全く無く、アルフォンシーナは改めて思いだそうと考えてみるが、思い出せない。

「ん…………」

少し肌寒さを感じて、アルフォンシーナが小さく呻く。
本当に僅かな声だったにも関わらず、その声はやけに響いて聞こえた。

「…………?」

そこで初めて、アルフォンシーナは異変に気がついた。
少なくとも自分が今居る場所は、シルヴェストリ侯爵邸の自室やベルナルドの執務室、それにかつてアルフォンシーナが過ごしていた実家・パルヴィス伯爵邸の自室でもない。
それどころか、今まで彼女が訪れた事のある場所のどことも異なる空気感があった。

今一体、自分自身の身に何が起きているというのだろうか。
急に不安になったアルフォンシーナは目覚めようとして、重たい瞼を何とか立ち上げた。

「ん…………」

頭のなかと同じく、ぼんやりとした景色が飛び込んできた。
そして、それと同時に頭痛とも、吐き気ともとれない不快感が襲ってきた。
それに酷く喉が渇いて仕方がない。
アルフォンシーナは誰かに助けを求めるように天に向かって手を伸ばした。

「目が醒めたのかっ?!」

不意にすぐ近くから男性の声がした。
途端にアルフォンシーナは安堵したように笑みを浮かべた。

「………ベルナルド、様…………」

何の疑いもなく、アルフォンシーナは最愛の彼の名を口にした。

「……………」

だが、彼がその呼びかけに応えることはなかった。
その代わりに、微かに息を呑んだ気配がした。

「………どうして、あの男の名前なんか呼ぶんだ………?」

暫しの沈黙の後、地を這うような低い声がそう囁いた。
その瞬間、アルフォンシーナの朦朧とした意識が覚醒し、意識を失う前までの記憶が一気に蘇ってきた。
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