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126.横恋慕

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そのまま逃げるようにして足早に部屋へと戻ると、アルフォンシーナの部屋の前ではソフィアが待っていた。

「………奥様。事情はオリヴァーから聞きましたよ。奥様の身に何も無くて何よりです。………ですが、奥様自ら報告に行かずとも、私に一声掛けて下されば良かったですのに………」

流石にビアンカのようにあからさまに頬を膨らませて抗議をしたりましないが、そう訴える姿はどこか寂しそうに見えた。
彼女はアルフォンシーナが自分を頼ってくれなかった事に悲しさを感じているのだろう。

アルフォンシーナは部屋の隅の、光の差し込まない辺りに椅子を移動させてもらうと、腰を降ろした。
窓から離れた位置に椅子を置き換えたのは、ブルーノ対策のためだった。
ベルナルドからの忠告を素直に聞き入れ、外から自分の姿が見えないようにしたのだ。
それから一呼吸置くと、アルフォンシーナは徐ろに口を開いた。

「ごめんなさい、ソフィア。あなたの忠誠心が本物であることは分かっているのだけれど………。けれど………またわたくしのせいで誰かに危害が及ぶのではないかと思うと居ても立ってもいられなくて………」

ソフィアからしてみれば、言い訳に聞こえるアルフォンシーナはソフィアに謝罪した。
するとソフィアは、やや呆れたような顔をした。

「………奥様はやはり、ご自分を責めすぎです。旦那様やビアンカの件は、元を正せばタルディッリ男爵令息が、勝手に奥様への横恋慕をして暴走したことから発展したのですから、奥様のせいではないのですよ………?」
「ありがとう、ソフィア。けれどその話は信じられないわ、。…………本当にブルーノがわたくしに想いを寄せているのであれば横恋慕だけれど………」

ふふ、と小さく、アルフォンシーナは声を上げた。
アルフォンシーナにとって、未だにブルーノが自分に想いを寄せている、というのは信じがたい話だった。
彼の自分への執着は、動物が生まれてから一番最初に目にした動くものを自分の親だと判断する本能と同じ様なもので、幼馴染であるが故にアルフォンシーナについて歩いているだけなのではないだろうかーーー。

しかし、その考えが甘すぎたということを、アルフォンシーナはこの日よりも少し後になり、その身を以て知る羽目になるのだった。
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