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110.朝の出来事

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翌朝。
アルフォンシーナは差し込んできた陽射しの眩しさで目が醒めた。
自分でも知らぬうちに眠ってしまっていた事に気が付き、慌てて身を起こす。

「わたくし…………?」

昨夜は意識が途絶えてしまうまで、椅子に座ってベルナルドと他愛のない会話をしていた筈なのに、アルフォンシーナが寝ていたのはベルナルドが体を休めていた筈のベッドだった。

ぼんやりとした寝起きの頭では理解が追いつかず、アルフォンシーナは辺りをきょろきょろと見回した。

大人三人が横になっても充分な広さのありそうな大きなベッドには自分一人しかおらず、肝心のベルナルドの姿がない。
その事実に気がついたアルフォンシーナは盛大に慌てた。
まさかとは思うが、一時的だったとはいえ意識を失うほどの大怪我を負っている身で、どこかへ出かけてしまったのだろうか。
一体何のために自分はいたのだろうと自らを心の中で叱責する。

とにかくベルナルドを見つけるのが優先だと、広いベッドの上を四つん這いで移動し、寝台を降りようとした途端、壁際に置かれた長椅子で眠るベルナルドの姿を認め、アルフォンシーナは少しだけ安堵した。

だが、何故本来ベッドで寝ているはずの彼があのような場所で寝ていて、椅子にいたはずの自分がベルナルドのベッドを占領していたのだろうかーーー。
どう考えてもこの事実から導かれる答えは、一つだけだった。
椅子に座ったまま眠ってしまったアルフォンシーナを、ベルナルドが抱き上げて自分が寝ていたベッドへと移動させ、自分は長椅子に移動させたのだ。

いくらアルフォンシーナがあまり肉付きが良い方ではないと言っても、そこそこの重量はあるはずだ。
それなのにベルナルドは自分を抱え上げ、移動させたと思うとアルフォンシーナは居た堪れない気持ちになった。

音を立てないようにゆっくりと寝台を降りると、長身の体を小さく丸め、左脇腹脇腹を庇うように眠るベルナルドにそっと近づく。
そして、彼の素肌に掛かったブランケットをそっと掛け直しながら脇腹の傷を確認するが、特に異変はなさそうだった。
だが、芸術品と見紛うほどに整った顔は普段と比べると明らかに血色が悪かった。

「………どうか、ご自分を大切にして下さいませ」

規則正しい寝息を立てるベルナルドに向かって、アルフォンシーナは呟いた。
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