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108.罰

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「………その言葉のとおりだ。私のような人間は、表舞台に出るべきではないし、ましてや正義を掲げる資格もない。これは、分別を弁えもせずに、私自身への報い………いや、天罰だ」

ベルナルドは恐ろしささえ感じるほどに抑揚のない声で呟くと、厳重に包帯を巻かれた左脇腹を乱暴に強く押さえつけた。

「旦那様………!」

アルフォンシーナは悲鳴を上げ、慌ててベルナルドを止めた。
血こそ滲んではこなかったが、その光景は酷く痛々しかった。
しかしベルナルドの言っている事の意味は、アルフォンシーナにとっては余計に理由がわからなった。

「………旦那様がどういった意味で仰っているのか、申し訳ないのですがわたくしには解りかねます。………ですが、おそらく………旦那様には旦那様のご事情があるのでしょう」

こんなことを言えば、またベルナルドに怒られるかもしれないと思いながらも、アルフォンシーナは真っ直ぐ彼を見つめた。
すると何故か突然、アルフォンシーナの頭の中には、先日ヴァレンツィ公爵夫人に言われた言葉が、蘇ってきた。
まるで、今その言葉を彼に告げるべきだとヴァレンツィ公爵夫人が示しているような気がして、アルフォンシーナは心の中で微笑む。
直感に従い、アルフォンシーナは迷いなくヴァレンツィ公爵夫人の言葉を口にした。

「ですが、………ご自分の事を責めてばかりでは、ご自分が苦しくなってしまいます。もっと自分自身を大切になさってください」

傷だらけの身体で、自分自身を嘲るベルナルドの姿は、まるで自分を罰するために敢えて苦しめているようにアルフォンシーナの目には映った。

彼が何を背負い、何と戦っているのか、一体自分に何を隠しているのかは全く見当もつかない。
だが、そんな彼だからこそ、アルフォンシーナは彼に寄り添い、彼の味方でいたいと心から思った。

体の前で重ね合わせた両手を握り、ふわりとベルナルドに向かって微笑む。
するとベルナルドは驚いたように目を瞠った。

「…………」

アルフォンシーナの反応は、彼の予想していたものとは違っていたのだろう。
その違いが、ベルナルドにとって良い意味での裏切りであることを、アルフォンシーナは切に願った。
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