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107.誘拐事件
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再び微妙な沈黙が、空間を支配した。
会話が続かないのは、互いに上手く関係が築けていないからなのだろうかと思いながら、アルフォンシーナはベルナルドが好みそうな話題を考えていると、徐ろにベルナルドが口を開いた。
「………ビアンカの誘拐の件だが………」
アルフォンシーナはびくりと肩を揺らした。
行方不明、ではなくベルナルドははっきりと『誘拐』という言葉を口にしたからだ。
「………今回はビアンカが標的になったが、敵は我がシルヴェストリ侯爵家の人間を狙っている。もし、ビアンカが遣いに行かなかったとしても、別の誰かが狙われていただろう。だから、あなたが気に病む事は全くない」
ベルナルドの美しい瑠璃色の瞳が、真っ直ぐにアルフォンシーナへと向けられた。
敵、という言葉に、アルフォンシーナは息を呑む。
間違いなく、ベルナルドは犯人が誰なのかを理解している。
しかも、その相手はこちらに明らかな敵意を持っているのだろう。
しかし、だからといってアルフォンシーナの罪悪感が消えるわけではなかった。
「………ですが、ブルーノを上手くあしらう事も出来ず、このような結果を招いたという事実には変わりありません。旦那様にまでこのような怪我を負わせてしまい………誠に申し訳ありません」
アルフォンシーナは椅子から立ち上がると、深々と頭を下げた。
その動きに連動して、彼女の緩やかに波打った見事な銀髪が、さらりと落ちてくる。
そのせいで、ベルナルドが『ブルーノ』という単語に酷く反応していた事に、アルフォンシーナは気が付かなかった。
「………いや、あなたは何も悪くない。このような結果を防げなかったのは、ひとえに私の力不足だし、この怪我は………因果応報、とでも言うべきものだ」
頭を上げたアルフォンシーナは、訝しげに眉を顰めた。
ベルナルドは一体何を言っているのだろう。
ビアンカの事件については、もしかしたらシルヴェストリ侯爵家の当主としての責任を感じているのかもしれないが、因果応報とは何のことなのだろうか。
「………その怪我は、ビアンカを救出する際に負ったものなのですよね?それなのに、因果応報とは………?」
アルフォンシーナは躊躇いがちに、ベルナルドに疑問をぶつける。
するとベルナルドは自嘲の笑みを浮かべた。
会話が続かないのは、互いに上手く関係が築けていないからなのだろうかと思いながら、アルフォンシーナはベルナルドが好みそうな話題を考えていると、徐ろにベルナルドが口を開いた。
「………ビアンカの誘拐の件だが………」
アルフォンシーナはびくりと肩を揺らした。
行方不明、ではなくベルナルドははっきりと『誘拐』という言葉を口にしたからだ。
「………今回はビアンカが標的になったが、敵は我がシルヴェストリ侯爵家の人間を狙っている。もし、ビアンカが遣いに行かなかったとしても、別の誰かが狙われていただろう。だから、あなたが気に病む事は全くない」
ベルナルドの美しい瑠璃色の瞳が、真っ直ぐにアルフォンシーナへと向けられた。
敵、という言葉に、アルフォンシーナは息を呑む。
間違いなく、ベルナルドは犯人が誰なのかを理解している。
しかも、その相手はこちらに明らかな敵意を持っているのだろう。
しかし、だからといってアルフォンシーナの罪悪感が消えるわけではなかった。
「………ですが、ブルーノを上手くあしらう事も出来ず、このような結果を招いたという事実には変わりありません。旦那様にまでこのような怪我を負わせてしまい………誠に申し訳ありません」
アルフォンシーナは椅子から立ち上がると、深々と頭を下げた。
その動きに連動して、彼女の緩やかに波打った見事な銀髪が、さらりと落ちてくる。
そのせいで、ベルナルドが『ブルーノ』という単語に酷く反応していた事に、アルフォンシーナは気が付かなかった。
「………いや、あなたは何も悪くない。このような結果を防げなかったのは、ひとえに私の力不足だし、この怪我は………因果応報、とでも言うべきものだ」
頭を上げたアルフォンシーナは、訝しげに眉を顰めた。
ベルナルドは一体何を言っているのだろう。
ビアンカの事件については、もしかしたらシルヴェストリ侯爵家の当主としての責任を感じているのかもしれないが、因果応報とは何のことなのだろうか。
「………その怪我は、ビアンカを救出する際に負ったものなのですよね?それなのに、因果応報とは………?」
アルフォンシーナは躊躇いがちに、ベルナルドに疑問をぶつける。
するとベルナルドは自嘲の笑みを浮かべた。
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