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66.アルフォンシーナの逆襲

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ーーー迂闊だった。
アルフォンシーナの頭の中に真っ先に浮かんだのはそんな思いだった。

結婚前までは、『国一番の淑女』と称されることこそあっても、政に影響を与えるような力もない、しがない伯爵家の娘であったアルフォンシーナが大きな注目を浴びることはさほどなかった。
だが、今は立場が違うのだということを、改めて実感した。
だからこそ、慎重な対応が求められたはずなのだが、そこまで配慮が出来なかった自分の甘さが悔やまれた。

そもそもアルフォンシーナがドレスや宝飾品を仕立てなかったという事実や、アルフォンシーナが倒れた原因を、全く関わりのなかったレベッカが知っていたという事自体が不気味ではあったが、ベッリーニ侯爵家の力を持ってすれば、そんなに難しいことではないのだろう。
だが、それをわざわざ調べたという事は、レベッカがそれだけアルフォンシーナに対して敵意や悪意を持っているという事だ。

レベッカが口にしたことは事情はどうあれ、結果だけ見れば事実だ。
だが、ここで出方を誤れば、シルヴェストリ侯爵家についての不名誉な噂が流れかねないだろう。

「………それも全て、シルヴェストリ侯爵家の内部の話ですので、わたくしの口からお話することはございませんわ。申し上げられることは、使用人たちはわたくしにとても良くしてくれております。今日もベッリーニ侯爵令嬢のお茶会に出席するのだから、と念入りに準備をしてくれましたから」

少し間をおいてから、アルフォンシーナはそう答えてにっこりと微笑んだ。

ソフィアもビアンカも、レベッカがどの様な人物なのか、ある程度は知っている様子で、今日は朝から念入りに準備をしてくれた。
今日の出席者は誰一人アルフォンシーナの装いについて言及しなかったが、涼し気な淡いライムグリーンのドレスに合わせ、丁寧に編み込まれた髪型は手がかかっている事が一目瞭然だった。

アルフォンシーナの思わぬ返しに、レベッカは押し黙り、その他の令嬢達はお互いに顔を見合わせた。

「………お分かり頂ければ、結構ですわ」

まるでシルヴェストリ侯爵家には何の問題も起きていないと言うかのように、アルフォンシーナが縁然と微笑んで見せた。

「……………っ」

レベッカは悔しそうに唇を噛む。
それからアルフォンシーナからあからさまに目を逸らした。

「場が白けたわ。今日はもう、お終いにしましょう」

レベッカがアルフォンシーナを遣り込めるつもりが、返り討ちに遭ったことで拗ねているのは明白だった。
しかし、混沌のお茶会が突如として終わりを告げたことで、アルフォンシーナは内心ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
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