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62.嫌味
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「それにしても、レベッカ様のお召し物、素敵ですわ。ラピスラズリのような深い瑠璃色がレベッカの美貌をより一層引き立てているように見えますもの」
「本当に!まるで夜の女神のようですわねぇ」
令嬢達が口々にレベッカのドレスを褒めるのを、アルフォンシーナはただ微笑みながら聞き流す。
わざわざあの色味のドレスを選んで着用し、それを令嬢達に褒めさせる事で、『ベルナルドに相応しいのは自分だ』とアピールしているのだろう。
「そうでしょう?このドレスはお父様が『このような色合いのドレスも着こなせるようになっておけ』と言って買ってくださったのよ」
ふふん、とレベッカが得意気に鼻を鳴らした。
(人前で鼻を鳴らすなんて、淑女としてあるまじき行動だけれど、そんなことはお構い無しなのね)
レベッカの自慢話よりも、彼女の言動に気を向けると、幾分嫌味たらしいやり取りも気にならなくなる。
相手の欠点を見つけるという事をすることはなかったが、どうやら結婚してから、自分の性格は少しずつ歪んできているらしい、とアルフォンシーナは冷静に己を省みる。
「それに比べて、アルフォンシーナ様のドレスは地味ねぇ」
別の令嬢が、ちらりとアルフォンシーナの方に目を向けると、莫迦にするように呟くのが聞こえた。
「………わたくし、あまり派手な服装は似合いませんの。ですから、ベッリーニ侯爵令嬢のように華やかな雰囲気のドレスがお似合いになる方は、素晴らしいと思いますわ」
少し憂いを含んだ、だがそれ以上に敬意の中に悪意を含んだ笑顔を向ける。
つまり、暗に自分は着飾る必要はないと言っているのだが、その意味が分かったのは、どうやらレベッカ一人だけのようだった。
激しい憎しみを込めた視線をアルフォンシーナに向けてくるが、アルフォンシーナは気が付かないフリをした。
他の取り巻きの令嬢達は、純粋にアルフォンシーナがレベッカに対して負けを認めたと思ったらしく、にやりとほくそ笑んでいる。
(この方達は、自分の意思など持たず、ただレベッカ様の指示に従い生きているのね………)
お茶を一口口にすると、ぼんやりと彼女達を見つめる。
自分自身の意思を持たぬ、人形のような存在。
それはまるで、結婚前までの自分自身のようだと思った。
「本当に!まるで夜の女神のようですわねぇ」
令嬢達が口々にレベッカのドレスを褒めるのを、アルフォンシーナはただ微笑みながら聞き流す。
わざわざあの色味のドレスを選んで着用し、それを令嬢達に褒めさせる事で、『ベルナルドに相応しいのは自分だ』とアピールしているのだろう。
「そうでしょう?このドレスはお父様が『このような色合いのドレスも着こなせるようになっておけ』と言って買ってくださったのよ」
ふふん、とレベッカが得意気に鼻を鳴らした。
(人前で鼻を鳴らすなんて、淑女としてあるまじき行動だけれど、そんなことはお構い無しなのね)
レベッカの自慢話よりも、彼女の言動に気を向けると、幾分嫌味たらしいやり取りも気にならなくなる。
相手の欠点を見つけるという事をすることはなかったが、どうやら結婚してから、自分の性格は少しずつ歪んできているらしい、とアルフォンシーナは冷静に己を省みる。
「それに比べて、アルフォンシーナ様のドレスは地味ねぇ」
別の令嬢が、ちらりとアルフォンシーナの方に目を向けると、莫迦にするように呟くのが聞こえた。
「………わたくし、あまり派手な服装は似合いませんの。ですから、ベッリーニ侯爵令嬢のように華やかな雰囲気のドレスがお似合いになる方は、素晴らしいと思いますわ」
少し憂いを含んだ、だがそれ以上に敬意の中に悪意を含んだ笑顔を向ける。
つまり、暗に自分は着飾る必要はないと言っているのだが、その意味が分かったのは、どうやらレベッカ一人だけのようだった。
激しい憎しみを込めた視線をアルフォンシーナに向けてくるが、アルフォンシーナは気が付かないフリをした。
他の取り巻きの令嬢達は、純粋にアルフォンシーナがレベッカに対して負けを認めたと思ったらしく、にやりとほくそ笑んでいる。
(この方達は、自分の意思など持たず、ただレベッカ様の指示に従い生きているのね………)
お茶を一口口にすると、ぼんやりと彼女達を見つめる。
自分自身の意思を持たぬ、人形のような存在。
それはまるで、結婚前までの自分自身のようだと思った。
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