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34.初めての反抗

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「何分、病み上がりですので、このような格好のままでのお詫びになりますことを、どうぞお許し下さいませ」

微かに目を伏せて、滑らかな口調でそう告げる。
洗練された仕草は、寝台から上半身を起こしただけだということすら、忘れさせてくれるほどだった。
そんなアルフォンシーナの謝罪に見惚れたのか、それとも呆気にとられたのかは分からなかったが、ベルナルドは静かにその場にたちつくし、アルフォンシーナの方を見つめていた。

故に、アルフォンシーナが再び顔を上げると、自然とベルナルドと顔を見合わせる形となった。

こうして向かい合い、互いの顔をまじまじと伺うことすらも、自分達にとっては珍しいことだった。

そして、まるでお互いの様子を窺うかのような時間がどのくらい続いただろうか。
アルフォンシーナは小さく息を吸い込んだ。

「…………わたくしは、きちんと謝りましたわ。ですから、次は旦那様の番です」

両眼はベルナルドを見据えたまま、アルフォンシーナは微かに微笑みを浮かべた。

「……………っ!」

一方のベルナルドは、微かに息を呑んだ気配こそしたが、それ以外は身じろぎ一つしなかった。
その代わりに、鳥肌が立つほどに整った顔を醜く歪める。

『国一番の淑女』と称されるアルフォンシーナが、まさか自分に反抗してくるとは夢にも思わなかったのだろう。
彼のその表情を見れただけで、アルフォンシーナは胸のすく思いだった。

「わたくしは、陛下の命で旦那様と夫婦になる際、互いに尊重し、尊敬しあい、慈しみ合えるような夫婦になれるようにと、自分なりに努力を重ねてきたと自負しております」

すっと腰を伸ばすと、すらすらと言葉が湧き出してくるようだった。
この三ヶ月間、口に出す事を躊躇い続けていた想いがこんなにも溜まっていたことに、アルフォンシーナ自身もまた驚く。

「ですが、努力をしてきたのはわたくしの方だけで、旦那様は結婚した後も行動を変えることなく、わたくしの存在を否定していらっしゃいました。………先程、わたくしが倒れた原因は、心労と栄養失調だと仰いましたが、そのどちらもが、旦那様の言動に心を痛めていた事が原因ですの。………ですから今までの行動について謝罪をし、行動を改めて頂けませんか?」

自分の思いの丈を一気に吐露すると、アルフォンシーナはゆっくりと口を閉ざし、ベルナルドの出方をじっと待った。
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