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324.ルドヴィクの心
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いくらアンジェロが優秀で、人格的にも優れているとは言っても、一人で国を動かすことはできない。
しかし、今国内に残っている貴族のみで要職を担う人材を賄えるとは到底思えなかった。
「新しく国を造るというのは、本当に大変なことだわ…………」
アリーチェが呆然と呟くと、隣に佇んでいたルドヴィクが静かに嗤った。
「………アンジェロ殿がいれば心配はいらないだろう。私も出来る限りの支援はするし、おそらくブロンザルドのパトリス殿も援助してくれるだろう。我々には、カヴァニスをこのような状況に陥れた責任があるからな」
「ルドヴィク様…………」
アリーチェもルドヴィクにつられるように笑みを浮かべた。
どちらも責任を感じる必要は全くないのだが、その気遣いが嬉しかったからだ。
「だから、あなたは何の憂いもなく私の所に嫁いでこればいい」
「……………えっ?」
次いで聞こえてきた言葉に、アリーチェは思わず目を瞬いた。
一瞬、聞き間違いかと思い、ルドヴィクに向き直ると、ルドヴィクは顔を真っ赤に染め上げながら、大きな手で口元を覆っていた。
その様子を見る限り、僅かな触れ合いでさえも恥ずかしがっていたルドヴィクの口から飛び出したとは思えない言葉は、どうやら気の所為ではないらしかったが、どう反応をすればよいのか分からずに、アリーチェも俯くことしか出来なかった。
気不味い沈黙が、二人を包む。
いつの間にか熱く火照った頬を覆い隠すように、アリーチェは両手で頬を包みこんだ。
「…………す、すまない……………。困らせるつもりは、なかったのだが…………」
どれくらいの時間が経っただろうか。
沈黙を破ったのは、ルドヴィクの方だった。
アリーチェが押し黙ってしまったことで慌てたらしく、小さな声で紡がれた言葉は酷く聞き取りにくかった。
「…………その、このような状況ではあなたが不安になるのでははないかと………アンジェロ殿が心配で、カヴァニスを離れることに躊躇いがあるのではないかと考えていたら、自然とあのような言葉が出てきたのだ」
言い訳のように付け足された言葉は、微かに震えて聞こえた。
だが、それが嘘偽りのないルドヴィクの気持ちなのだとアリーチェは悟る。
ルドヴィクは口下手であるが、その代わりにたった一つしかない深いエメラルド色の瞳が、彼の心を雄弁に映し出すことを知っているからだ。
しかし、今国内に残っている貴族のみで要職を担う人材を賄えるとは到底思えなかった。
「新しく国を造るというのは、本当に大変なことだわ…………」
アリーチェが呆然と呟くと、隣に佇んでいたルドヴィクが静かに嗤った。
「………アンジェロ殿がいれば心配はいらないだろう。私も出来る限りの支援はするし、おそらくブロンザルドのパトリス殿も援助してくれるだろう。我々には、カヴァニスをこのような状況に陥れた責任があるからな」
「ルドヴィク様…………」
アリーチェもルドヴィクにつられるように笑みを浮かべた。
どちらも責任を感じる必要は全くないのだが、その気遣いが嬉しかったからだ。
「だから、あなたは何の憂いもなく私の所に嫁いでこればいい」
「……………えっ?」
次いで聞こえてきた言葉に、アリーチェは思わず目を瞬いた。
一瞬、聞き間違いかと思い、ルドヴィクに向き直ると、ルドヴィクは顔を真っ赤に染め上げながら、大きな手で口元を覆っていた。
その様子を見る限り、僅かな触れ合いでさえも恥ずかしがっていたルドヴィクの口から飛び出したとは思えない言葉は、どうやら気の所為ではないらしかったが、どう反応をすればよいのか分からずに、アリーチェも俯くことしか出来なかった。
気不味い沈黙が、二人を包む。
いつの間にか熱く火照った頬を覆い隠すように、アリーチェは両手で頬を包みこんだ。
「…………す、すまない……………。困らせるつもりは、なかったのだが…………」
どれくらいの時間が経っただろうか。
沈黙を破ったのは、ルドヴィクの方だった。
アリーチェが押し黙ってしまったことで慌てたらしく、小さな声で紡がれた言葉は酷く聞き取りにくかった。
「…………その、このような状況ではあなたが不安になるのでははないかと………アンジェロ殿が心配で、カヴァニスを離れることに躊躇いがあるのではないかと考えていたら、自然とあのような言葉が出てきたのだ」
言い訳のように付け足された言葉は、微かに震えて聞こえた。
だが、それが嘘偽りのないルドヴィクの気持ちなのだとアリーチェは悟る。
ルドヴィクは口下手であるが、その代わりにたった一つしかない深いエメラルド色の瞳が、彼の心を雄弁に映し出すことを知っているからだ。
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