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206.異変

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「それが本当だとしたら………ルドヴィク様は、ブロンザルド国王もしくは魔石から力を削ぐ目的であのような事を………?」
「可能性は、十分に有り得るでしょう
ね」

動きの読めないセヴランを警戒するように両手で長剣を構えたクロードが、険しい顔をしながら、頷いた。

しかし、その予想が正しかったとしたら、ルドヴィクの目的は何なのだろうか。
彼にはセヴランを殺害するだけの理由も大義名分も十分にある。
隣国の王を殺害したとしても、責められるのは悪逆の限りを尽くし低たセヴランであって、ルドヴィクではないはずだ。
  だとすると、ルドヴィクの行動は説明がつかなくなる。

「首でも斬り落とせば、手っ取り早いでしょうに…………」

実の息子の発言とは思えないような言葉が、パトリスの口から零れ落ちた。
パトリスは父親が、ルドヴィクによって討たれることを望んでいるのだろう。
魔石の魔力に濁ってもう色も鮮明に見えなくなってしまったセヴランと、かつては同じだった灰色の瞳が心配そうにルドヴィクを追っている。

「………我が王は、口下手な上にああいう面倒臭い性格ですから………」

クロードのそんな言葉に全てが詰まっている気がして、アリーチェは不謹慎にも笑顔を零してしまう。

確かにルドヴィクは自分を犠牲にしても他者を慈しむような部分がある。
その最たるものが、カヴァニス滅亡の真実だろう。
剣を振るい、生命を奪う人間とは思えないくらいにルドヴィクは心優しい。
そんな彼の優しさの根源にあるのは、堪えられないような不遇の少年時代を支えてくれたシャルルの深い愛情に違いなかった。
アリーチェは密やかにその事実に感謝し、目を閉じた。

と。

「……気の所為、でしょうか。動きが………」

パトリスがルドヴィクを凝視しながら、呟いた。
アリーチェはその言葉にはっとして目を開ける。
しかし、相変わらずルドヴィクは軽やかな身のこなしで攻撃を避け、隙を狙ってはセヴランに攻撃を繰り出していた。

一方のセヴランのほうは不気味な呻き声を垂れ流しながら、執拗にルドヴィクを狙っている。
しかし、先程まではどんどん勢いを増していた筈の攻撃が心なしか鈍り、斬られた手足の再生も遅くなってきているように感じられた。

それを感じ取ったのだろう。
ルドヴィクは不敵な笑みを浮かべた。
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