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149.王都

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視界は暗いのに、周囲がやけに騒がしくて、アリーチェは不機嫌そうに顔を顰めた。
それからゆっくりとまぶたを持ち上げわ何度かまばたきを繰り返していると、少しずつ朦朧とした意識がはっきりとしてくるのが分かった。

「ん…………」

視界に飛び込んできたものは、ここ数日で見慣れてしまった東の塔の高い天井でもなく、セヴランに押し込められた立派すぎる馬車の内装でもなく、見慣れぬ豪奢な部屋だった。

「わたくしは…………一体…………?」

馬車が動き出して少し経ってから、何だか意識が遠のいていく感じがあったというところまでは覚えているが、その後の記憶は非常に曖昧だった。

一体ここはどこなのだろう。
意識を失う前に、甘い香りのせいで意識を失い、この部屋に運ばれて来たのだろうか。
必死に思い出そうと、大きく深呼吸を繰り返すが、なかなかうまく行かなかった。

「お目覚めですか、王女様」

無機質な声が響いて、アリーチェは思わずリネンを強く握りしめた。
声をかけてきたのは、全く見知らぬ侍女だった。
アリーチェを心配している、というよりも「義務だから見張っていた」という雰囲気が滲み出ている。

「………ここは………?」
「ブロンザルドの王都の中心、ブロンザルドの王城です」

侍女の返答は、アリーチェの抱えていた疑問に対する、最も残酷な答えだった。
未だにぼんやりとする頭で必死に考えた中で、最悪の答え。

それは、自分が気を失っている間にブロンザルドの王都まで連れてこられてしまったというものだった。

「陛下が、『王女様が良く休めていないようだから、誘眠効果のある香を炊くように』とご指示なさったのです」

侍女はどこか誇らしげにそう言い放つ。
そう聞けば、息子の妻になる哀れな亡国の王女の体調までも気遣う『優しい』国王だと誰もが信じるに違いない。
だがそれは上辺だけを取り繕ったに過ぎず、セヴランの本音とすればアリーチェが逃げ出したり暴れたり出来ぬように眠らせ、意識がない間に目的地まで運んでしまおうというのが本音だろう。

だが、それを訴えたところで、アリーチェにとって事態が好転する可能性は皆無だった。
ここはブロンザルドで、セヴランは国王。
彼が正義で、彼の言ったことが全てなのだ。

アリーチェは唇を噛むと、もう一度瞬きをした。
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