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133.父の身勝手
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何のために、と問いかけたかったが、とてつもなく嫌な予感がして、アリーチェはただセヴランを見つめたまま声を出せずにいた。
パトリスもまた、薄汚れた亜麻色の長い髪の間から覗く目でセヴランを見据えていた。
「私は、望むものは全て手に入れてきました。………ですが、未だ二つだけ手中に収める事が出来ていないものがあるんですよ。………それが、何だか分かりますか?」
セヴランの笑みが、一層不気味さを増し、アリーチェは思わず身震いをした。
「…………分かりませんか?それならば教えてあげましょう。一つ目は、きちんとした能力のある跡継ぎです」
セヴランの言葉に、アリーチェとパトリスはほぼ同時に目を見開いた。
やはり、セヴランは単純に王族ではなく、己の血を引く息子を次代の王に仕立て上げたかったのだろう。
現在、セヴランの血を引く子は、パトリスただ一人。
その息子に失望した彼は、何よりも子を欲したが、彼と妃との間には子が出来ることはなかった。
ブロンザルドやカヴァニスで信仰されている神の教えでは、離婚も重婚も、認められていない。
つまり、夫婦のどちらかが死亡しない限りは、再婚も出来ないのだ。
だからこそ、王族の妃選びは慎重に行われている。
パトリスの母、つまり現ブロンザルド王妃も一定の基準に従って選ばれた筈だ。
にも拘わらず、パトリス以外の子には恵まれなかったのだ。
無い物ねだり、といえばそうなのかもしれないが、パトリスには何の非もない。寧ろセヴランが真っ当な父親ならば、彼はこのような目には遭わず、王太子として国のために動いていただろう。
「………何て、身勝手な………」
セヴランの耳に届くか分からないような微かな声で、アリーチェは呟いた。
「子は、親の庇護がなければ命を落とします。ここまで育ててやったのですから、その恩に報いるような働きをして返すのが、当然でしょう?」
セヴランのせせら笑う声が、妙に耳についた。
同じ言語で会話を交わしているというのに、まるで別の世界の人間と話しているような気持ちになるのは、セヴランの考えが全く理解出来ないからだろう。
アリーチェがゆっくりと首を横に振った、まさにその時、セヴランの手が、再びアリーチェの腕を掴んだ。
パトリスもまた、薄汚れた亜麻色の長い髪の間から覗く目でセヴランを見据えていた。
「私は、望むものは全て手に入れてきました。………ですが、未だ二つだけ手中に収める事が出来ていないものがあるんですよ。………それが、何だか分かりますか?」
セヴランの笑みが、一層不気味さを増し、アリーチェは思わず身震いをした。
「…………分かりませんか?それならば教えてあげましょう。一つ目は、きちんとした能力のある跡継ぎです」
セヴランの言葉に、アリーチェとパトリスはほぼ同時に目を見開いた。
やはり、セヴランは単純に王族ではなく、己の血を引く息子を次代の王に仕立て上げたかったのだろう。
現在、セヴランの血を引く子は、パトリスただ一人。
その息子に失望した彼は、何よりも子を欲したが、彼と妃との間には子が出来ることはなかった。
ブロンザルドやカヴァニスで信仰されている神の教えでは、離婚も重婚も、認められていない。
つまり、夫婦のどちらかが死亡しない限りは、再婚も出来ないのだ。
だからこそ、王族の妃選びは慎重に行われている。
パトリスの母、つまり現ブロンザルド王妃も一定の基準に従って選ばれた筈だ。
にも拘わらず、パトリス以外の子には恵まれなかったのだ。
無い物ねだり、といえばそうなのかもしれないが、パトリスには何の非もない。寧ろセヴランが真っ当な父親ならば、彼はこのような目には遭わず、王太子として国のために動いていただろう。
「………何て、身勝手な………」
セヴランの耳に届くか分からないような微かな声で、アリーチェは呟いた。
「子は、親の庇護がなければ命を落とします。ここまで育ててやったのですから、その恩に報いるような働きをして返すのが、当然でしょう?」
セヴランのせせら笑う声が、妙に耳についた。
同じ言語で会話を交わしているというのに、まるで別の世界の人間と話しているような気持ちになるのは、セヴランの考えが全く理解出来ないからだろう。
アリーチェがゆっくりと首を横に振った、まさにその時、セヴランの手が、再びアリーチェの腕を掴んだ。
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