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50.小箱(ルドヴィク視点)
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山のように積み重なった書類全てに目を通し終わり、最後の一枚にサインをしたルドヴィクが溜息をついて立ち上がるのとほぼ同時に、クロードが眉間に皺を寄せて入ってきた。
「………今度は何だ」
やや不機嫌そうに低い声を上げる主に、クロードは神妙な面持ちで口を開く。
「動きが、あったようです」
「ああ。それならジネーヴラから簡単に報告は受けた」
小さく声を上げたルドヴィクは、表情は動かさないまま、クロードの方に視線を向けた。
「そうでしたか。………敢えて警備を手薄にし、交代の侍女を入室させずに様子を見ていたところで姫君に接触したのですが………会話の内容から、城内には我々が把握している以上に多くの侵入者が潜伏しているようです。………もういい加減、姫君の存在を秘することも限界かと………」
後半にいくにつれ、じっと耳を傾けていたルドヴィクの表情か苦々しいものに変わっていった。
「………分かっている。それで?わざわざそれを報告するためだけに足を運ぶほど、セリエール侯爵は暇を持て余しているのか?」
落ち着いた口調ではあるが、その奥に苛立ちが秘められていることをクロードは知っている。
それは、クロードをわざわざ「セリエール侯爵」と呼んだことからも伺えた。
クロードは呆れたように溜息をつくと、小箱を取り出した。
「これを手に入れる為に、どれだけ苦労したと思っているんですか?」
「それがお前の仕事だろう」
ルドヴィクは立ち上がると、催促するかのようにクロードに向かって手を差し出した。
「………これほどのモノは、滅多に出回らないそうですよ。それをあなたは………」
「今は小言は聞かない」
きっぱりとそう告げると、ルドヴィクは半ば強引にクロードの手から箱を奪い取った。
「これで、ようやく…………」
小さな箱をぎゅっと強く握りしめると、ルドヴィクはそのまま己の手と共に額に押し当てた。
その様はまるで箱の中身に祈りを込めているかのようだった。
「ルドヴィク。………あなたは、本当に不器用ですね」
哀れみと、同情の入り混じった視線を向けながら、クロードは『君主』ではなく、『友』の名を呼ぶ。
神は、彼にどれだけの試練を与えれば気が済むというのだろうか。
一体彼が何をしたというのか。
ルドヴィクが傷付き、苦しむ姿を見るたびに、一種の憤りにも似た感情を、クロードは抱いてきた。
いつか、彼が救われる日は来ることを祈りながら、クロードはルドヴィクを見守るのだった。
「………今度は何だ」
やや不機嫌そうに低い声を上げる主に、クロードは神妙な面持ちで口を開く。
「動きが、あったようです」
「ああ。それならジネーヴラから簡単に報告は受けた」
小さく声を上げたルドヴィクは、表情は動かさないまま、クロードの方に視線を向けた。
「そうでしたか。………敢えて警備を手薄にし、交代の侍女を入室させずに様子を見ていたところで姫君に接触したのですが………会話の内容から、城内には我々が把握している以上に多くの侵入者が潜伏しているようです。………もういい加減、姫君の存在を秘することも限界かと………」
後半にいくにつれ、じっと耳を傾けていたルドヴィクの表情か苦々しいものに変わっていった。
「………分かっている。それで?わざわざそれを報告するためだけに足を運ぶほど、セリエール侯爵は暇を持て余しているのか?」
落ち着いた口調ではあるが、その奥に苛立ちが秘められていることをクロードは知っている。
それは、クロードをわざわざ「セリエール侯爵」と呼んだことからも伺えた。
クロードは呆れたように溜息をつくと、小箱を取り出した。
「これを手に入れる為に、どれだけ苦労したと思っているんですか?」
「それがお前の仕事だろう」
ルドヴィクは立ち上がると、催促するかのようにクロードに向かって手を差し出した。
「………これほどのモノは、滅多に出回らないそうですよ。それをあなたは………」
「今は小言は聞かない」
きっぱりとそう告げると、ルドヴィクは半ば強引にクロードの手から箱を奪い取った。
「これで、ようやく…………」
小さな箱をぎゅっと強く握りしめると、ルドヴィクはそのまま己の手と共に額に押し当てた。
その様はまるで箱の中身に祈りを込めているかのようだった。
「ルドヴィク。………あなたは、本当に不器用ですね」
哀れみと、同情の入り混じった視線を向けながら、クロードは『君主』ではなく、『友』の名を呼ぶ。
神は、彼にどれだけの試練を与えれば気が済むというのだろうか。
一体彼が何をしたというのか。
ルドヴィクが傷付き、苦しむ姿を見るたびに、一種の憤りにも似た感情を、クロードは抱いてきた。
いつか、彼が救われる日は来ることを祈りながら、クロードはルドヴィクを見守るのだった。
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