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17.違和感
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その日を境に、アリーチェとルドヴィクの関係は少し変化した。
目に見えて何が、というわけではないが、二人の間に流れる空気がほんの少しだけ、柔らかいものになったようにアリーチェは感じていた。
そのせいなのか、アリーチェ自身も心穏やかに過ごせる日が増えてきた気がする。
「アリーチェ様。梨をお持ちしました」
ジネーヴラを始めとした侍女たちも、変わらず良くしてくれ、自由に出歩くことが出来ないということ以外に不満はない。
「ありがとう。でも、部屋から出るわけではないのだから、食べてばかりいては太ってしまうわ」
「そんな………!アリーチェ様は痩せすぎですから、少しくらい太っても大丈夫ですよ!私なんて、空気を吸っても太りますから、アリーチェ様のようなほっそりした体形には憧れます」
「そ、そうかしら…………。ジネーヴラはかわいいと思うけれど……」
ジネーヴラが少し頬を染める。
確かに、ジネーヴラは少しぽっちゃりとしているが、愛嬌がありとても可愛らしい。それに、ほかの侍女たちもそうだが、非常によく気が利くし、いつもアリーチェを気遣ってくれているのがよく分かる。
そんな彼女たちに、初めの頃は八つ当たりをしていたことを申し訳なく思っていた。
そしてそれはルドヴィクに対しても同じだった。
最初の頃は祖国を失ったショックで取り乱し、憎しみをぶつけ、ただ復讐心を燃やしながら生きていた。
だが、ルドヴィクと接し、彼を知ることで少しずつ自分の気持ちが変わった来たことを認めざるを得なかった。
ルドヴィクは無愛想ではあるが、以前からの通り誠実で清廉潔白な人物だった。
騎士道に乗っ取った言動、状況を見極めて的確な指示を出す判断力。その全てが称賛に価すると皆が口を揃えて褒め称える。
そんな人物が何故、理由もなくカヴァニスに奇襲攻撃を仕掛け、滅亡に追い込むような真似をしたのだろうという疑問が徐々に強くなっていく。
「………イザイアの民にとって、カヴァニスというのはどんな印象だったのかしら?」
椅子に腰かけたまま、窓から覗く綺麗に澄み渡った空を見つめながら、アリーチェはふとそう呟いた。
ジネーヴラが一瞬はっとして目を見開き、ほかの侍女たちに視線を合わせたことに、アリーチェは気が付いていない。
「カヴァニスは、小国ながらとても風光明媚なところだと………」
「……そうよね。それ以外の印象はないわよね」
アリーチェは納得したように、同意する。
景色が綺麗で、良い葡萄酒の産地であるということ以外に、大した特徴のない国。それがカヴァニスだった。
対してイザイアも、そしてもう一方の大国ブロンザルドも、軍事力があり、様々な資源に恵まれている。
この二国が互いに牽制しあい、直接的な軍事衝突が起らないように、敢えて攻めたところで利益を生まないカヴァニスを間に入れた不可侵協定を結んだという経緯があった。
それを破ってまでカヴァニスを攻める理由など、見当たらないのだ。
考えれば考えるほどに、ルドヴィクの行動に感じる違和感が大きくなっていく。
もしかしたらルドヴィクは、アリーチェの知らない別の真実を隠しているのではないだろうか。
アリーチェは、静かに目を閉じると、ルドヴィクの美しいエメラルド色の瞳を思い出すのだった。
目に見えて何が、というわけではないが、二人の間に流れる空気がほんの少しだけ、柔らかいものになったようにアリーチェは感じていた。
そのせいなのか、アリーチェ自身も心穏やかに過ごせる日が増えてきた気がする。
「アリーチェ様。梨をお持ちしました」
ジネーヴラを始めとした侍女たちも、変わらず良くしてくれ、自由に出歩くことが出来ないということ以外に不満はない。
「ありがとう。でも、部屋から出るわけではないのだから、食べてばかりいては太ってしまうわ」
「そんな………!アリーチェ様は痩せすぎですから、少しくらい太っても大丈夫ですよ!私なんて、空気を吸っても太りますから、アリーチェ様のようなほっそりした体形には憧れます」
「そ、そうかしら…………。ジネーヴラはかわいいと思うけれど……」
ジネーヴラが少し頬を染める。
確かに、ジネーヴラは少しぽっちゃりとしているが、愛嬌がありとても可愛らしい。それに、ほかの侍女たちもそうだが、非常によく気が利くし、いつもアリーチェを気遣ってくれているのがよく分かる。
そんな彼女たちに、初めの頃は八つ当たりをしていたことを申し訳なく思っていた。
そしてそれはルドヴィクに対しても同じだった。
最初の頃は祖国を失ったショックで取り乱し、憎しみをぶつけ、ただ復讐心を燃やしながら生きていた。
だが、ルドヴィクと接し、彼を知ることで少しずつ自分の気持ちが変わった来たことを認めざるを得なかった。
ルドヴィクは無愛想ではあるが、以前からの通り誠実で清廉潔白な人物だった。
騎士道に乗っ取った言動、状況を見極めて的確な指示を出す判断力。その全てが称賛に価すると皆が口を揃えて褒め称える。
そんな人物が何故、理由もなくカヴァニスに奇襲攻撃を仕掛け、滅亡に追い込むような真似をしたのだろうという疑問が徐々に強くなっていく。
「………イザイアの民にとって、カヴァニスというのはどんな印象だったのかしら?」
椅子に腰かけたまま、窓から覗く綺麗に澄み渡った空を見つめながら、アリーチェはふとそう呟いた。
ジネーヴラが一瞬はっとして目を見開き、ほかの侍女たちに視線を合わせたことに、アリーチェは気が付いていない。
「カヴァニスは、小国ながらとても風光明媚なところだと………」
「……そうよね。それ以外の印象はないわよね」
アリーチェは納得したように、同意する。
景色が綺麗で、良い葡萄酒の産地であるということ以外に、大した特徴のない国。それがカヴァニスだった。
対してイザイアも、そしてもう一方の大国ブロンザルドも、軍事力があり、様々な資源に恵まれている。
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それを破ってまでカヴァニスを攻める理由など、見当たらないのだ。
考えれば考えるほどに、ルドヴィクの行動に感じる違和感が大きくなっていく。
もしかしたらルドヴィクは、アリーチェの知らない別の真実を隠しているのではないだろうか。
アリーチェは、静かに目を閉じると、ルドヴィクの美しいエメラルド色の瞳を思い出すのだった。
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