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番外編
第七話 試練のお茶会(その五)
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侯爵夫人の薄い唇は、横一文字に固く結ばれていた。
けれど、私と目があった瞬間、その口元がふっと、綻んだ。
「………合格です」
「…………はい?」
侯爵夫人の仰った言葉の意味がわからず、私は思わず聞き返してしまった。
合格っておっしゃいましたよね?何が、どうしてそうなるのでしょうか。
「エリーゼ・キャメロット公爵令嬢。私達は貴女が王太子妃に相応しいのか、何よりもエルカリオン王国の王太子妃としての覚悟があるのかを試させて頂いておりました。数々のご無礼、お許し下さいませ」
いきなり、侯爵夫人の態度が変わったことで、私は更に戸惑った。
王太子妃の覚悟?相応しいかの試験?
私、試されていたの?
………と言うことは、今までのやり取りは全て、嘘ということ?
「先日、王太子妃教育が、無事に終了したと言うことで、僭越ながら私がこの最終試験のお役目を仰せつかったのです」
「さ、最終試験………?ええと、私、そのようなお話は………」
「ええ、これは王妃様直々のご指示でございます。キャメロット公爵令嬢は、非常に優秀で、王太子妃教育はほぼ必要がないけれど、一つだけ心配なことがあると」
先程までとはまるで別人のような、優しい笑みを湛えて、侯爵夫人は説明してくださる。
「心配な事とは、何でしょうか」
殆ど毎日王太子妃教育に顔を出してくださった王妃様。でも、そんな事は全く仰ってらっしゃらなかったのに。
「今、お試しさせていただいた、覚悟ですわ。キャメロット公爵令嬢は、ご自身の出自に劣等感を持ってらっしゃる。そして、それが原因で、自己肯定感が低いのを王妃様は心配してらっしゃったのですよ」
確かに、そのとおりだわ。ジェイド様と共に生きることを決めたときに、その事に気がついたはずなのに、いつも心のどこかで『本当に自分でいいのか』という疑問を抱き続けていたのを、王妃様はお見通しでいらっしゃったのね………。
私も、いつか王妃様のような素晴らしい方になれるのかしら。………いえ、なれるかなれないかは私次第よね。ならば、ジェイド様に相応しい王太子妃に、そして王妃になれるように精進しなければなりませんわね。
私は改めて、自分の覚悟を確認したのだった。
けれど、私と目があった瞬間、その口元がふっと、綻んだ。
「………合格です」
「…………はい?」
侯爵夫人の仰った言葉の意味がわからず、私は思わず聞き返してしまった。
合格っておっしゃいましたよね?何が、どうしてそうなるのでしょうか。
「エリーゼ・キャメロット公爵令嬢。私達は貴女が王太子妃に相応しいのか、何よりもエルカリオン王国の王太子妃としての覚悟があるのかを試させて頂いておりました。数々のご無礼、お許し下さいませ」
いきなり、侯爵夫人の態度が変わったことで、私は更に戸惑った。
王太子妃の覚悟?相応しいかの試験?
私、試されていたの?
………と言うことは、今までのやり取りは全て、嘘ということ?
「先日、王太子妃教育が、無事に終了したと言うことで、僭越ながら私がこの最終試験のお役目を仰せつかったのです」
「さ、最終試験………?ええと、私、そのようなお話は………」
「ええ、これは王妃様直々のご指示でございます。キャメロット公爵令嬢は、非常に優秀で、王太子妃教育はほぼ必要がないけれど、一つだけ心配なことがあると」
先程までとはまるで別人のような、優しい笑みを湛えて、侯爵夫人は説明してくださる。
「心配な事とは、何でしょうか」
殆ど毎日王太子妃教育に顔を出してくださった王妃様。でも、そんな事は全く仰ってらっしゃらなかったのに。
「今、お試しさせていただいた、覚悟ですわ。キャメロット公爵令嬢は、ご自身の出自に劣等感を持ってらっしゃる。そして、それが原因で、自己肯定感が低いのを王妃様は心配してらっしゃったのですよ」
確かに、そのとおりだわ。ジェイド様と共に生きることを決めたときに、その事に気がついたはずなのに、いつも心のどこかで『本当に自分でいいのか』という疑問を抱き続けていたのを、王妃様はお見通しでいらっしゃったのね………。
私も、いつか王妃様のような素晴らしい方になれるのかしら。………いえ、なれるかなれないかは私次第よね。ならば、ジェイド様に相応しい王太子妃に、そして王妃になれるように精進しなければなりませんわね。
私は改めて、自分の覚悟を確認したのだった。
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